先月12日、改正廃棄物処理法が成立した。金属スクラップヤード業に許可制を導入する今回の改正には、どのような背景や狙いがあるのか。所管する環境省の角倉一郎局長に聞いた。

――同法改正の背景について。

 「使用済みの金属を収集し、適切な保管・選別・加工を行うスクラップヤードは循環資源の輪において非常に重要な役割を果たしている。一方、一部のスクラップヤードで騒音、水質汚濁、火災などが発生し、生活環境保全上の支障が生じている。環境省の調査では昨年度、全国にヤードが4625事業所あり、計275件の問題が報告された」

 「こうした課題を解決するため、一部の自治体では金属スクラップの保管に関する条例が制定されている。しかし、規制のない自治体にスクラップヤードが設置されるといった課題があり、全国一律の規制を求める声が自治体から多く寄せられていた」

 「事業者にとっては、不公正な競争環境が問題になっていると認識している。不適正な事業者は環境対策にあまり費用をかけないため、コストが安い分、金属の買い取り価格を高値に設定できる。その結果、適正に事業を営む業者が不利になってしまっている。不適正なスクラップヤードを経由した金属資源の海外流出も指摘されている」

 「より大きな観点では、世界で資源の獲得競争が増している。天然資源だけでなく、再生資源の確保に向けた取り組みのさらなる強化が日本にとっての課題。不適正ヤード対策はこの取り組みの一環でもある」

――法改正の目的は。

 「適正な事業者を後押しし、その事業を伸ばしていくことが最大の目的。全国一律の規制によって不適正ヤードが全国に広がることを食い止め、金属スクラップの流通が適正事業者に集約されていく。そうなれば不適正な事業者の淘汰につながる。資源循環産業の発展は国家戦略の一つになっており、環境省としても適正な事業者を最大限に応援したい」

――金属スクラップを保管・再生するヤード全般に「許可制」を導入した経緯は。

 「前回2017年の改正で有害使用済機器の保管に届出制度を導入した。当初はこれで不適正ヤードにある程度対応できると考えていた。しかし、自治体から『規制対象から外れる事業者がある』と困惑の声が強まっていた。また、不適正な事業者に関する苦情件数が増加し、国会でもスクラップヤードを規制強化すべきとの質問が出るようになっていた」

 「廃棄物処理法は『廃棄物』の取り扱いを規制するものであり、廃棄物以外の『有価物』は規制対象にしにくい。その例外が有害使用済機器の届出制度だったが、環境省として有価物である金属スクラップ全般を規制対象とするか検討を重ねた結果、一歩踏み込んで対応すべきとの判断に至った」

――「届出制」にしなかった理由は。

 「生活環境保全上の支障を未然に防ぐには事前に適正な環境対策を講じられる事業者であることを審査し、認められた者のみが事業を営める許可制とすることが適当と判断した」

――鉄スクラップが「専(もっぱ)ら物」という規定は残るが。

 「専ら物は、あくまで『廃棄物』に関する許可対象の除外規定。有価な資源である鉄スクラップは廃棄物ではない。『専ら物』であるという規定が使われるのは主に廃棄物の収集・運搬において。金属スクラップの保管・再生を規制する今回の法改正によって制度上の齟齬(そご)は生じない」

――適正な事業者に過度な負担が生じない制度運用をどのように実現するか。

 「廃棄物処理業やリサイクル業の許認可を取得済みの事業者は〝みなし許可〟として新たに許可を取る必要はない。また、許可申請が必要な事業者にとっては保管・再生に関わる基準の設定が大きなポイントになる、具体的な基準は今後、政省令で定めていく。その際には日本鉄リサイクル工業会にも検討メンバーに入ってもらい、関係業界の声をしっかり聞いて決める。適正な事業者であれば対応できる水準となるよう検討していく」

――改正法の施行時期について。

 「施行は公布日から2年6カ月以内の政令で定める日としており、まだ決まっていない。事業者が基準に対応できるよう、施行までのリードタイムを設ける必要がある。ただ、その基準が定まらないとリードタイムを判断できない。自治体としても執行体制を整えるための時間が必要だ」

 「一方で、課題に対応するには施行は早い方が良いとも考えている。そのため、今年度中をめどに具体的な基準が示せるようにしたい。事業者などと相談した上での話だが、来年3月までに示せると良いと考えている」

――事業者としてできること。

 「規制基準が早期に示されることが大前提になるが、許可申請は施行前でも可能となっている。許可の発効は法施行日からになるが、都道府県知事が法施行前に許可を出すこともできる。今後、整備する政省令やガイドラインを基に許可基準に適合する施設・設備の整備などの取り組みを進め、許可申請を行っていただきたい」

 「また、法施行前であっても環境対策が不十分な場合、基準に適合する環境対策を講じていただき、生活環境保全上の支障の未然防止に努めていただきたい」

――不適正業者の取り締まりについて。

 「改正法では許可制のほか、報告徴収、立入検査、改善命令、措置命令などの措置を導入している。改正法施行後、環境対策が不十分な事業者に対しては、こうした措置を講ずることになる」

 「取り締まりを実行する自治体に対しては、環境省として全面的にサポートしていく。環境省の地方支分部局は『地方環境事務所』だったが、設置法改正で、きょう7月1日付で『地方環境局』に名称が変わった。体制も強化される。各地方環境局が自治体に伴走し、しっかり支援していく。ガイドラインや手引きを具体的に示すほか、説明会なども開催していきたい」

 「不適正ヤードの是正や取り締まりは、産業廃棄物処理業者に対する指導・監督のノウハウと重なる部分が多い。地方環境局のノウハウや人材を活用したサポートが可能だ」