全日本ロープ加工組合連合会(全加連)は11月9日、大阪府港湾教育訓練センター(大阪市大正区)で「第7回全国ロープ加工技能士実技コンクール」を開催する。全国から、国家検定であるロープ加工技能士の1級16人、2級11人が参加し、ワイヤロープ加工技術をそれぞれ競い合う。開催への想いや全加連の取り組みについて、戎敬史会長(築港船具会長)に聞いた。(山浦 なつき)
――6年ぶりの開催となる。
「ワイヤロープ加工技能の向上を目的に、第1回の1984年から隔年で開催している。初回は東京製綱の土浦工場で、前回は千葉県のポリテクセンター千葉で実施した」
「選手は支部からの自薦・多選どちらも。ロープ加工技能検定の受検資格自体が、1級であれば実務経験7年以上または2級合格後2年、2級であれば実務経験2年以上であるため、このコンクールの参加者は腕に自信のある、中級・上級の職人たちだ」
「コンクール種目は1級が22ミリのロープを用いて『両端かご差し』、2級が18ミリ同で『両端まき差し』という加工で競い合う。減点法で採点選考し、採点の高位順に賞の授与者を決定する」
――ご自身とコンクールの関わりは。
「全加連は77年に創立し、私はその第1回の技能検定を受検した。2008年に開催された第5回からは理事として参加。当時は阪南支部長(現南近畿支部)として、審査員補助を担当した」
「11年に大阪ワイヤロープ連合会の創立に際し、大阪支部に移り、13~17年の5年間会長を務めた。前回の19年は事務局担当理事として準備段階から運営の全てに関わった」
「当たり前だが第1回目に検定を受検した時は、まさか自分が全加連の会長としてコンクール開催を迎えるとは思っておらず、感慨深い。これまでワイヤロープの周知活動と加工技能者の地位向上を目指してさまざまな活動に取り組んできた。今回のコンクールはその集大成と考えている」
――全加連は労働災害の防止を目的に設立した。
「かつて加工技術が未熟な者が玉掛ワイヤロープを作成し、それが原因で痛ましい労働災害が発生した。これをきっかけに『二度とこういった事故が起きないように』との強い思いで、全国のワイヤロープの加工に関わる企業が集まった」
「当会が設立して以来、ロープ加工技能士が作った玉掛ワイヤロープでの労働災害は1件も起こっていない。今回参加する選手たちには、この技術を誇りに、そして安全に対する自覚・責任を持って競技に挑んでいただきたい」
――ほかにはどのような取り組みを行っている。
「ロープ加工技能士について、全国各支部単位での講習会、勉強会などを主催している。また、編み込み加工をしている技術者だけでなく、ロック加工も含めワイヤロープに関わる仕事をするすべての人に、検定の受検を呼び掛けている」
「ロープ加工やワイヤロープの知識を共有することで、これからの日本のワイヤロープ加工を支え、次世代への技術継承につなげたい」
「また、玉掛け作業中の労働災害をなくすための活動も強化している。技能士が作成した製品に添付される技能士ラベル(黄色ラベル)の認知度向上、使用推進のため、同会の取り組みや安全規則なども同時に紹介する『技能士ラベルPRチラシ』を配布しており、全国の関係各所で利用している」
――他団体との関わりは。
「線材製品協会鋼索部会と全国鋼索商業連合会(全鋼連)の両団体からは、今回のコンクールへもご後援いただいている。全鋼連とは統合の話も出ているが、現時点で具体的な動きはない」
「両団体には、ロープ加工の技能検定の学科だけの受検もお勧めしている。職人不足や海外製品の台頭など、業界の諸課題は共通している。当会の責務は、技能に裏付けされたワイヤロープ加工の拡大。他団体と連携しながらワイヤロープおよび加工の付加価値向上のための取り組みを積極的に実施したい」
「国内のワイヤロープ需要は横ばい状態。価格はここ数年上昇したが、足元では落ち着いている。ここ最近ではベルトスリングやラウンドスリングなど繊維ロープが代替しており、危機感を感じている。とはいえワイヤロープは『産業の命綱』と呼ばれ、造船・エレベーター・クレーンなど多くの産業で活用されており、決してなくなることはない。鋼製ワイヤロープの新たな用途や加工技術の開発、またその技能を活用できる新分野も模索していきたい」





