大 岩 氏
大 岩 氏
古 畑 氏
古 畑 氏
山 下 氏
山 下 氏
井 口 氏
井 口 氏
大 岩 氏 古 畑 氏 山 下 氏 井 口 氏

 東鉄連の「これからの担い手」の一角でありデジタル化推進委員でもある4人の若手役員に、東鉄連の存在意義や将来を見据えた課題・意見などを座談会形式で忌憚なく語ってもらった。(聞き手=本紙・太田一郎)

――東鉄連との関わりから。

古畑氏 初めて参加したのが創立60周年のギネス挑戦イベントで、役員としては6年ほど前から。最初は同世代の理事がおらず、大先輩ばかりで理事会に出るのも気が重く、発言もしづらかったが、時の正副会長のお気遣いで話を振ってもらったり発言の機会をいただいたりして今はだいぶ参加しやすくなった。

 現在は城南鉄鋼会の会長として東鉄連では常任理事を務め、その中でデジタル化推進委員(以下=D委)と事業企画委員を兼務する。

大岩氏 先代の父(故大岩正和氏)と初めて総会に出たのが10年ほど前。その後、城南鉄鋼会からの派遣理事として関わるようになった。当初は知り合いがおらず不安だったが諸先輩に温かく迎えてもらい、各団体の世代交代で若手理事も増えると新たな出会いもあり、今は楽しく出席している。

井口氏 数年前に本所鉄交会から派遣され、最初は経営情報委員として関わり、2年ほど前からD委に移った。

山下氏 私もギネス挑戦が最初だった。当時はIT業界から移って1年余り。東鉄連自体をまだ理解できていなかったが、会長だったわが社の社長(齊藤榮一氏)とともにあの12月の雨天の中、寒さを我慢しながら参加したのは思い出深い。今は亀戸鉄睦会から派遣され、D委に携わっている。

――皆さんにとっての「東鉄連」とは。

古畑氏 率直に「良い会」だと思う。70年間、連綿と続いて今の執行部にバトンが渡り、それをわれわれ世代で途切れさせぬよう、次の代に繋がなくては。

大岩氏 東鉄連の会員企業には仕入れ先や売り先が多く、その点では「業界あってのわが社」という想いが強い。創立に携わった先人たちに敬意を表するとともに、長きにわたってバトンを繋いできた先輩方に感謝している。

井口氏 わが社は浦安鉄鋼団地内にあるが、地図には「東鉄連」の文字がある。以前は「なぜ?」と思ったが、鉄鋼団地を創設したのが東鉄連だと知って納得し、それに携わった先達のバイタリティに畏れ入った。私にとっては職場のルーツだ。

山下氏 わが社の社長が東鉄連の前会長なので裏方仕事を手伝い、その関係で事務局とも関わり、団体運営のたいへんさを垣間見てきた。これを70年間、営々と刻んできた歴史の重みを実感している。

――団体の存在意義は「会員に役立つこと」であり、東鉄連も必要だったから創設され、事業を通じて求心力を高めました。世代交代を経て今の会員は会に対し思いもさまざま。皆さんは如何ですか。

古畑氏 わが社にとっては人財育成に関する研修や勉強会が役に立っている。鉄鋼新聞社と共催する新人教養講座はもちろん、今春に初めて試みた「次世代リーダー育成研修」も有意義だった。うちの社員が取引の無い会員会社の人と名刺交換して互いに業容を知り、後日再会して新たな取引につながった。こうやって「人と商売の輪」を広げられるのが東鉄連のメリットだ。

 実際、私が東鉄連に参画してからここにいる3社も含めて随分と新規開拓が進んだ。

大岩氏 視察会で同業他社をはじめ大手の製造拠点などを訪問するとすごく勉強になるし、刺激を受ける。1社単体ではなかなか難しいので本当にありがたい。

山下氏 人が繋がる場だ。基本的に経営者の集まりなのでその意義は大きい。会って話すことで商売のヒントを得たり、同じ境遇だからこその悩みを打ち明けあったり。会議のあとの懇親会で仲間同士が打ち解けるのも早い。

 品種部会の存在もそう。長年の蓄積データをみれば、その時々の景気動向や業界のトレンド分析に役立つし、それを発信すれば会員メリットにもなる。また、イベントを通じて他社の従業員同士の人脈形成にも一役買っており、そこから予期せぬ化学反応が起きるケースもあるようだ。

井口氏 私が重宝するのは各種アンケートだ。アンケートは、言い換えると「意見の場」であり「今の業界実態」を反映するから、自社と照らし合わせることができ、参考になる。

 人の繋がりで言えば「若手の会」も、仲間づくりや人の輪を広げる絶好の場だ。傘下団体の中には存在するが東鉄連には無いので、検討したらと思う。

大岩氏 経営者セミナーも、テーマに沿って経営者同士が議論しあったり長くトップを務めるベテランの経験や教訓が聴けたりするので若手には貴重だ。ヒントや気づきも多い。

山下氏 転じて異業種交流はどうだろうか。経営者の視野が広がり、学びも大きいと思う。

古畑氏 城南鉄鋼会の中で共同配送に着手し、うちと大岩商会さんで口火を切った。「実業」の面で連携・協業の余地はあるし、それを東鉄連の枠組みに広げられたら意義深い。特に若い世代の関心を呼ぶのではないか。そんな発想やアイデアを集めて試してみようと話し合えるだけでも、東鉄連の場はありがたい。

――東鉄連には「業界共通の経営課題の解決支援に取り組む」という方針があり、そのひとつがITデジタル化対応です。D委についてお聞かせ下さい。

古畑氏 そもそもD委は全鉄連の活動で齊藤榮一委員長をヘッドにわれわれ東鉄連メンバーが委員を務める。デジタル庁を窓口にEDI構築やミルシートの電子化などを模索しているが、今は活動が委員の中だけにとどまっており、今後どうやって会員に周知していくかが課題だ。その際、今も電話、FAXの紙ベース商売が多いこの業界で電子化の有効性や必要性を伝えていくには、概念だけではなく実務に直結した商品やサービスを発信すれば興味を惹くと思う。

大岩氏 行政と共に実証実験にも関わり勉強にもなったが、EDI構築は時間を要し「業界を挙げて」となると課題も多いと痛感する。今後とも真摯に取り組む一方、ITツールが世の中に溢れ、個々で調べると結構な手間だからD委がそれらを紹介する機会をつくり選択肢と判断材料を広げてもらうのは一手だ。また、それらを導入した際の効果や「このサービスを使ってこんなメリットが出た」という事例紹介は、具体性があり関心を持ってもらえるかもしれない。

井口氏 付け加えて言えば、市販の勤怠管理ソフトやイントラネットの有効活用策や各社のカスタマイズ事例などの情報収集・提供は有益だと考えられる。

――山下さんはITが専門分野です。

山下氏 国が考えるデジタル化促進の流れや目的を、業界に広く情報提供するのがひとつ。全鉄連という全国団体だからこそ行政に窓口あり、東鉄連はそのお膝元だから種々の情報を得やすい。先般もデジ庁の担当者に講演してもらったが、このように国(行政)と業界を橋渡しするのもD委の役目だ。

 さらにはITデジタル化に関する会員の「よろず相談所」的な機能も大切。専門情報や過去の成功・失敗例などを引き出せるよう種々の事例を蓄積し、検索やQ&Aといった仕組みを創れば発展性も期待できると思う。

――それは面白い。

山下氏 アナログ手法が多く残るこの業界で、IT化推進を決めるのは各社の社長だが、社長はITの専門家ではない。技術的な知見や導入の仕方、その際の国の補助金・助成金などの取得方法や活用策などを具体的に提案し、業界のデジタル化を底上げするお手伝いができればと思っている。

――最後に皆さんがイメージする東鉄連、ひいては業界団体活動の展望や将来像を。

古畑氏 私自身とうちの社員の例で言えば、参加して初めて「良さ」を理解し「次」につながった。いろんな仲間ができるし、商売につながる可能性もある。私と同じように参加することで意義を実感する人もいるだろうから、どうやって会に促すかを自分自身のテーマにしたい。いつもと違う顔ぶれが増えれば会も活性化するだろうし。

大岩氏 「物流24年問題」セミナーのとき大勢が受講した。関心が高ければ参加するし、魅力あるイベントを企画・実施することだと思う。それをPRして新規入会が増えれば理想だ。東鉄連に入っていない都内の鉄屋もいるので、その会社の世代交代などを機に呼びかけてみたいと思う。

井口氏 行政や関係機関に対し、この業界の「利」につながる陳情活動や提言も業界団体の重要な使命だと思う。たとえば中小企業にとって今の「働き方改革」の是非を問う声は多いと感じる。全鉄連を通じてだろうが東鉄連がその一端を担うのも一手ではないか。

山下氏 数が「力」を示すバロメータのひとつである以上、東鉄連も加盟団体も会員の維持・増強はBCPを考えるうえでも重要だ。団体同士は交流イベントに踏み出したところがすでにある。東鉄連の場合は容易ではないが、構造的に鉄屋の数が減るのであれば、歴史認識を踏まえ取捨選択しつつも異業種や他業界の受け入れも検討する時期が迫りつつあると感じる。若手はそうした考えに柔軟だから、われわれ世代で横断的に「これからの東鉄連」を考えてもいいのかなと、個人的には思っている。

――皆さん、貴重なご意見ありがとうございました。

パネラー

▽古畑隆政氏(ヒガ・アーツ&メタル専務)

▽大岩翔太氏(大岩商会社長)

▽井口隆一郎氏(井口産業社長)

▽山下信也氏(栄鋼管常務執行役員)