創立50周年を祝った社員&家族慰安の集い(2017年秋、ベイエリアにて)
創立50周年を祝った社員&家族慰安の集い(2017年秋、ベイエリアにて)
創立50周年を祝った社員&家族慰安の集い(2017年秋、ベイエリアにて)

 東京の最東端に位置する江戸川地区。この地を発祥とする鉄屋仲間が、互いの親交や自社の発展を願って同業者の会を結成したのが江戸川鉄栄会だ。1967年(昭42)10月に誕生し、今年で58年目。発足時は27社で初代会長には楠本正二氏(丸正鋼材)が就き、以後、現・纐纈元氏(交告商店)まで9人の会長でつないできた。

 江戸川の鉄商は、長く地元に根づく老舗が存在する一方で社歴の浅いところも多い。

 すでに鉄屋街を形成していた本所や神田、亀戸界隈で鉄屋稼業を経験した独立心旺盛な若者が、高度経済成長を追い風に、都心に近く、それでいて地価の安かったこの地に小さいながらも自分の城を築いた。同業が集まれば寄り合いもできる。都市化の流れに押されて他地区からやってきた移転組も加わり、他団体に遅れながらも自然な流れで鉄屋仲間の会がつくられた。

 ただ、東鉄連に加入したのが73年(昭48)だから発足から6年が経っている。この頃は、東京の鉄屋の多くが造成したばかりの浦安鉄鋼団地に進出した時期と重なる。浦安に事業用地を有するには東鉄連の会員企業であることが条件だから、加盟を急ぐ声があったとしてもおかしくない。

 これについては「当時の江戸川地区にはまだ土地が多く、地場で拡張の余地があった。しかも新規誕生組は資金力が乏しく事業規模も小さい。大金を払って浦安に出るのは雲の上の話だった」と会の重鎮は述懐する。それでも「いずれは浦安進出もあるだろうし、他の地区団体も加盟しているのだから…」と周囲に促されたそうだ。

 江戸川区は東西を一級河川に挟まれ東側で千葉県と接し、南端で東京湾に面する。地域柄、往時は臨海部開発や河川の護岸工事など公共事業が盛んで「江戸川の鉄屋は区内の仕事で喰っていける」と言われたほど。こうした特性もあり、会員の業種は多彩だ。そして昔も今も、家業として代々続く店が多い。

 現在の会員数は28社。会の存在意義を「会員相互の親睦」と位置づけ、定例行事も会員企業の従業員とその家族が参加できるイベントが多い。そしていつも盛況だ。創立50周年を迎えた17年(平成29)には、節目に相応しく過去最高の250人を集め、ベイエリアホテルでランチビュッフェを愉しんだあと隣接する「夢の国」を満喫。さらには台湾視察旅行も実施し、中国鋼鉄(CSC)見学を含む主要都市の名所・旧跡観光で見聞を広げた。

 半面、定時総会は会員企業の代表者が揃い、厳かな雰囲気の中で年次総括する。メリハリが効いており、親しき間柄であってもなぁなぁにならず、一定の節度と緊張感をもって運営しているのも「らしさ」だ。昨年春には熱海の老舗旅館「大観荘」で総会を開催。好評だったことから来年も同様のスタイルを検討中。

 世代交代も進み、今は第2世代が中心だが徐々に3代目の若手も台頭しつつある。江戸川鉄栄会には「若手会」が存在し、次世代を担う有望株がここに集い、仲間意識を醸成する。