24年度秋季例会(24年10月)。人手不足で悩む会員が多い中、若手採用のポイントなどを現役就活生からの意見や参加者同士のディスカッションを交えながら学んだ
24年度秋季例会(24年10月)。人手不足で悩む会員が多い中、若手採用のポイントなどを現役就活生からの意見や参加者同士のディスカッションを交えながら学んだ
地元日本製鉄名古屋製鉄所の見学会を主催。07年から毎年開催しており、これまで延べ700人超の会員会社社員が参加している
地元日本製鉄名古屋製鉄所の見学会を主催。07年から毎年開催しており、これまで延べ700人超の会員会社社員が参加している
小河会長
小河会長
24年度秋季例会(24年10月)。人手不足で悩む会員が多い中、若手採用のポイントなどを現役就活生からの意見や参加者同士のディスカッションを交えながら学んだ 地元日本製鉄名古屋製鉄所の見学会を主催。07年から毎年開催しており、これまで延べ700人超の会員会社社員が参加している 小河会長

 東海コイルセンター工業会が創立60周年の節目を迎えた。1965年(昭40)に東海SF(スリット・フラット)工業会として発足以来、モノづくりの集積地である東海地区の自動車産業をはじめとした鉄鋼ユーザーの発展を支え続けてきた。小河通治会長(小河商店社長)に、これまで工業会が培ってきた功績、激変する需要環境下でユーザーへのサプライチェーン(SC)を維持・強化していくための課題とその解決に向けた今後の取り組みなどについて聞いた。(後藤 隆博)

――現役の会長として60周年の節目を迎えた心境を。

 「まずメーカー、商社、需要家らお世話になったすべての方に感謝申し上げたい。当工業会の運営や活動に尽力いただいた諸先輩方、先人らの努力にも改めて敬意を表したいと思う。今回の節目を機に、新たに歴史を刻んでいけるよう決意を新たにしているところだ」

――小河会長は2007年(平19)から約20年間、会長職を務められている。その間、コイルセンター(CC)を取り巻く環境も随分変わったが。

 「2008~09年のリーマンショック、11年の東日本大震災、20年のコロナ禍など、さまざまな社会情勢の変化があった。工業会会員の出荷量もこうした外部環境の変化、最大ユーザーである自動車産業のEV化へのシフトや生産拠点の海外移転などの構造変化に直面して大きく乱高下した。リーマンショックの影響が色濃く出た08年度の工業会出荷量は、前年度比で100万トン超減少。コロナ禍の20年には400万トンを割り込み、以後24年度まで5期連続で400万トン割れが続いている。直近1~2年の動向を見ると下げ止まり感はあるが、厳しい市場環境に変わりはなない」

――会員会社の統合・再編の動きも多かった。

 「20年前は32社あった会員会社も、現在は24社にまで減った。全国的な傾向だろうが、メーカー、商社の再編や需要構造の変化に応じて、CCも商社系をベースにした再編が進んだ。ただ東海地区は、今でも他地区に比べるとオーナー系が地場産業にしっかり根付いて商売をされているところが多いと思う」

――東海地区のCCが地域に果たしてきた役割、今後の地場の鋼板流通についてどう見ているか。

 「自動車産業をはじめとしたユーザーに対するSCをしっかり構築、維持してきたから今の工業会がある。CCでは直近10年間でも材料の支給材・集購化が進み、自販が少なくなった。受託加工量が多いのが当地区の特徴だ。自動車産業向けでは品質・納期、ハイテン材加工など新たなニーズにうまく対応してきたCCが生き残っている。一方非自動車分野では、今後薄肉材加工や表面処理対応などが多くなる可能性がある。カーボンニュートラル(CN)の観点から電炉品、GXスチールの採用などユーザーニーズは変化しつつあり、自販部分ではコスト増要因にもなり得る」

 「ユーザーの海外をはじめとした他拠点への展開や提携先での生産など一連の動向は注視していく必要がある。東海地区以外での地産地消の動きがより顕著になると、当工業会会員の扱い数量や加工量に直結する」

――SCを維持していく上でCCの喫緊の課題は。

 「他産業と同じく、人手の確保は永遠のテーマだ。海外からの労働者、現場での女性の活躍など、働き方は今後ますます多様化してくるだろう」

 「SCの維持や現場の安全を確保するためには設備保全も課題だ。老朽化設備の更新やメンテナンスなどをしっかり行う必要がある。ただ近年は設備や設置するための基礎工事費用が高騰しており、完全に対応できているとは言い難い。設備保全の原資を確保するためにも、適正な加工賃の確保が重要だ」

 「全国コイルセンター工業組合では昨年9月に『適切な事業環境整備実現に関する改めてご協力のお願い』と題した文書を発出し会員各社に配布した。労務費と設備の保全・更新費に焦点を当てており、加工賃の適正化に向けた取り組みを周知している。昨年来、一定の改定が実現しているが、設備保全に必要な経費と照らし合わせれば依然不十分の水準で交渉は道半ば。粘り強くユーザーの理解を得ていく必要がある」

 「昨年の熱中症対策義務化、今年1月からの取引適正化法、4月の物流効率化法など、改正された法への対応も課題だ」

――CC各社が抱える課題解決、会員の操業面に関して東海CC工業会が行ってきた活動は。

 「設備に関しては、かつて設備関連メーカーを招へいしてプレゼンテーションをしてもらったことがある。スリッターの自動刃組、表面検査装置、新技術の勉強会なども適宜行っていた。人材・安全面についても安全講習、現場スタッフのメンタルケア、ハラスメント講習なども手掛けた」

 「会員会社の操業面の安定に寄与する施策としては、15年ほど前からコイルの結露予防アラートシステムサービスを工業会が窓口として担っている。日鉄テックスエンジ(サービス開始当初は日新工機)が提供するアラートシステムを利用しているもの。商社系やメーカー系の会員は自社やグループ間で情報共有を行っているケースが多いが、個社で当該の設備投資が難しいオーナー系会員6社が現在月額契約で同サービスを利用している。同じく15年ほど続けているのが製鉄所見学会だ。地元の日本製鉄名古屋製鉄所の厚意で協力いただき、毎年実際に鉄の生産工程を見たことのない会員の若手や女性社員に参加してもらっている。これまでの参加人数は延べ700人超に上る」

――業界を取り巻く操業環境も随分と変化している。工業会として今後新たに取り組む活動などについては。

 「基本的には従来の活動を継続していく。加えて、DXや生成AI技術への対応、システムセキュリティー観覧など直近で表面化している新たな課題への対応・解決に向けた周知活動の在り方を検討したい。また、BCP対策として自然災害発生時だけでなく、会員会社の設備トラブルやラインが停止した場合にSCを維持するための相互補完体制の整備なども工業会が旗振り役になり得ると思う。会員個社でできない活動を工業会として周知し、対外的に情報発信していく」  (5面に続く)