――100周年に向けての意気込みを。

 「当社が100周年を迎える頃には世界は様変わりしているはずだ。仕事のやり方も今とは全く異なっているだろう。現時点でデジタルトランスフォーメーション(DX)など他の上場会社に比べて後れを取っているが、できる限り早く世界の変化に追い付くよう努めたい」

 「現在脚光を浴びている人工知能(AI)の活用も模索したい。恐らく数年後にはAIが仕事のあり方に大きく関わってくる。鋼材流通だけが無関係でいられるわけがなく、この技術革新に乗り遅れると致命的になりかねない。仕事のやり方、あり方を根本的に変える必要がどこかのタイミングで出てくるだろう。鋼材流通は扱う製品が重厚長大なのでアマゾンの自動倉庫のようにはいかないが、それに近いイノベーションは起こしていかないといけない。専門家の力も借りながら、今後AIの活用法は真剣に検討していくことになるだろう」

――今後の事業のあり方について。

 「ステンレスの出荷量が右肩上がりで拡大するとは想定していない。鋼材を右から左へ流す商売だけではこの先生き残るのは難しいだろう。特に当社は上場コストがかかるため、高付加価値な商いへとシフトしていく必要がある」

 「モデルケースとなるのが、4月に完全子会社化したナカタニ。顧客ニーズを基に素材や製造方法、加工先などを選び最適な部品やソリューションを提供するコーディネート機能を強みとするファブレスメーカーならではのビジネスモデルで、予算精度が高い。UEXでも原料調達から加工提案までトータルコーディネートするプロジェクト営業部を22年に発足し、課題解決型営業を推進している。上下水道や水門といった国土強靭化関連、半導体や再生可能エネルギーなど国家戦略プロジェクト関連の需要分野に注力しながら、高付加価値な製品販売の比率を高めて鋼材相場の業績への影響度を低くしていきたい」

――ガバナンス強化にも取り組んでいます。

 「昨春発覚した貿易保険不正受給問題をきっかけに、業務の脱属人化を図っている。属人化は不祥事だけでなく、事業継続性の面でもリスクとなる。第三者委員会による再発防止策を着実に運用し、人事の流動性を高める。社内でハレーションが起きないよう配慮しつつ、最適なスピード感で進めていく」