神戸製鋼所120年の中でも機械事業部門の歴史は長い。起源は1914年に開発を始めたレシプロ圧縮機で、翌年には自社技術により高圧空気圧縮機の製作を開始した。この時期は第一次世界大戦で、さまざまな機械の国産化が求められた時期。機械事業部門長の猿丸正悟執行役員は「新しいことに挑戦することが機械事業部門の源流であり文化」と話す。
圧縮機は、55年にスクリュ式、66年にはターボ式でも製作を始め、3種をそろえる世界唯一の圧縮機メーカーとなった。産業機械では今に至る主力メニューの一つ、タイヤ・ゴム機械を開発。日系タイヤメーカーの成長やグローバル化と共に事業を伸ばし、ゴム混練機では世界シェア40%を握る。このほか樹脂機械やPVDコーティング装置、等方圧加圧装置(IP装置)、熱交換器といった世界トップクラスのシェア・導入実績を誇る特色ある製品が多い。
93年には、国内4工場(高砂回転機、高砂重機、岩屋、呉)を高砂製作所に再編・統合し、今に至る世界のマザー工場に。米国やアジアといった海外事業のオーガニックグロースに加え、2017年にはスウェーデンのIP装置世界最大手、クインタス・テクノロジーズを買収。22年には汎用圧縮機の事業会社、コベルコ・コンプレッサを三浦工業との合弁会社とし、両社の国内サービス網を活用した協業などで成果を挙げている。
26年3月期はこうした導入製品に保守メンテナンスを提供するストックビジネスの強化が掛け合わさり、機械事業部門として過去最高となる経常利益400億円を計上する見込みだ。
足元の業績は好調だが、未来を担う新規事業の育成にも余念はない。一昨年にはコベルコ科研を機械事業部門の所管に迎え、同社のLEO事業と共に半導体検査装置事業の開拓・拡大に取り組んでいる。自身も30代の大半を研究所で過ごし、半導体関連の商品開発を試行した猿丸事業部門長は「グループ全社の知見を結集するために数年前に本社主導で半導体ワーキンググループが発足された。機械事業部門としても半導体市場におけるコベルコの事業機会の最大化に貢献していく」とする。積極果敢に挑戦する風土の継承が、機械事業111年の歴史を支えている。