超々臨界型の火力発電所(神戸市)
超々臨界型の火力発電所(神戸市)

 神戸製鋼所は、国内有数の発電事業者でもある。神戸市、栃木県真岡市で計6基の大型発電設備を運転。総発電容量は約395万キロワットに上り、地域の電力安定供給に貢献している。

 発電事業は収益の大きな柱にもなっている。2025年3月期の経常利益は523億円。全社の約3分の1を稼いだ。26年3月期は、前の期に計上した一過性の増益要因の反動などで350億円と減益を見込むが、年間350億~400億円程度の利益を安定して稼ぐ実力を備える。

 今年は阪神大震災から30年の節目の年。神鋼の発電事業は震災と無縁ではない。

 阪神大震災では神戸製鉄所(神戸市、当時)が大きな被害を受けた。復旧の過程で計画されたのがIPP(独立系発電事業者)事業だ。自家発電設備の操業で培ったノウハウや、燃料関連のインフラを持つ強みを生かし、1996年にIPP事業への参入を決定。02年に神戸発電所1号機、04年に同2号機を相次ぎ稼働させた。

 11年の東日本大震災では、原子力発電所の稼働停止に加え、東日本沿岸の火力発電所の多くが被害を受け、首都圏への電力供給が不足する事態が起きた。

 そこで計画されたのが神鋼・真岡発電所のプロジェクトだ。近傍に東京ガスの都市ガス基幹幹線が新たに整備される機会を捉え、アルミ圧延品の製造拠点である真岡製造所の隣接地に都市ガス発電所を建設。19年に1号機、20年に2号機を稼働させた。国内初の内陸型大型発電所として、電力の安定供給にとって頼もしい存在といえる。

 電力事業の持続的成長に向けて、避けて通れないのが脱炭素化への対応だ。

 政府は21年、「非効率石炭火力のフェードアウト(段階的削減)」方針を打ち出し、石炭火力発電について、30年に向け既設の超々臨界方式の最高水準の発電効率の達成を求めた。

 これを受けて神鋼は、コベルコパワー神戸の1、2号機で、発電効率向上に向け、アンモニア混焼を計画。現在、アンモニア混焼20%を目標に取り組みを進めている。超々臨界方式を採るコベルコパワー第二の3、4号機を含め、将来的にはアンモニア専焼への転換を検討している。

 電力レジリエンスが求められている日本。神鋼は、カーボンニュートラルという課題に挑戦しながら、電力の安定供給を通じた社会貢献を続ける構えだ。