池 上 社 長
池 上 社 長
滋賀工場
滋賀工場
「NAS NM15M」が採用された折りたたみ式スマートフォン
「NAS NM15M」が採用された折りたたみ式スマートフォン
池 上 社 長 滋賀工場 「NAS NM15M」が採用された折りたたみ式スマートフォン

 ナス鋼帯(本社・大阪市中央区、社長・池上雄二氏)の源流は1933年創立の三国鋼帯製造所。73年に日本冶金工業系列となり、81年に現社名に変更し現在の滋賀工場(滋賀県湖南市)を開設した。滋賀工場で生産する精密圧延製品は板厚0・05ミリ(50マイクロメートル)~1ミリ超。板幅は最大500ミリで、4ミリ程度の狭幅フープも出荷する。ユーザーに密着して小ロット・多品種・短納期ニーズにきめ細かく対応しているため、受注ロットは1トン前後が多く、特殊な材料では100キロという場合もある。

 日本冶金工業が高機能材の拡販に注力するなか、ナス鋼帯も高機能材の数量を大きく伸ばし、SUS304にしても高清浄度鋼など高品質材に力を入れてきた。2019年度に38・8%だった「KK材」(高機能・高品質材)の売上高比率は右肩上がりで24年度に49・5%に達し、「25年度は5割を超える見通し」(池上社長)。高機能材の海外拡販の重点地域は中国、韓国、インドと欧米。日本冶金工業の海外営業拠点との情報連携も深化させていく。

 新型コロナ禍以降、内需低調と輸入増を背景に国内一般材の市場規模が縮小し、現状の売上数量はコロナ前の4分の3程度だが、付加価値製品で収益力を高めている。また高機能材は生産負荷が大きいことから滋賀工場はタイトな状況となっている。

 需要先では自動車関連が半分を占め、内燃機関用ガスケット、各種センサーカバー、タイヤ製造用金型部品など用途は多岐にわたる。ただ自動車依存度をさらに高める考えはなく、リチウムイオン電池ケース用高耐食ステンレス鋼、半導体製造装置用ニッケル基合金、データセンター向けステンレス鋼、スマホ用高強度非磁性ステンレス鋼をはじめ多様な需要分野で実績を伸ばしている。

 インドの高機能材販売では電子機器はまだ少なく、化学装置や火力発電用排煙脱硫装置向けのニッケル基合金がメイン。日本冶金工業が開設するインド現地法人と連携して、足元の需要対応を強化しつつ、再生可能エネルギー分野など将来の成長分野も捕捉していく。

 滋賀工場では、現行中期計画(23~25年度)で電気制御機器の交流モータ化など老朽化更新を進めた。池上社長は「現在策定を進めている次の中期計画では、ボトルネックの解消とともに、将来を見据えた攻めの設備投資を実施したい」と話す。

 同社の人員は約130人で、滋賀工場の技能職は約80人。将来に向けた人材確保と育成は重要課題であり、4年前から高卒新人など若手社員の採用を強化している。24年度は高卒2人、中途採用7人を採用し、25年度はすでに6人採用した。給与水準も引き上げており、人材面でも持続的成長が可能な基盤作りを進めていく。