――特殊鋼鋼材の需要構造が変わりゆく時代の下で、大同特殊鋼は積極的・主体的に事業ポートフォリオの変革を推進しています。営業面ではどんな施策が重要になりますか。

 「最重点施策に位置付けるのは、ベースロードの特殊鋼鋼材事業の強靭化、そして成長市場製品の積極拡販だ。当社グループを取り巻く競争環境は年々厳しさを増しているが、高付加価値製品のニーズは確実に拡大しており、現状は脅威と機会が同時に存在する局面だと捉えている」

 「特殊鋼鋼材事業は、自動車分野での日系OEMの自動車生産台数の伸び悩み、BEV化進展による特殊鋼使用量の減少、海外生産移管の進展などにより、極めて厳しい状況と認識している。一方でカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーに対するニーズがあり、当社の電気炉一貫製造の強みを生かして一定の数量規模を確保していきたい」

 「取り扱い製品の『量から質へ』のポートフォリオ改革を進め、高度化する顧客要求水準に応えて、当社が強みを持つ高機能材の需要拡大という『機会』を捉えていく。単に素材を販売・供給するのではなく、顧客ニーズをきちんと捉え、新しい価値創造に向けて取り組んでいく。社内における製販一体化、新製品開発の加速に加え、グループ連携を強化することや、取引先商社・流通と共にチャレンジしていくことも必要だ」

――これまで培った製造技術基盤を強化し、成長市場製品に照準を合わせて高付加価値領域を伸ばそうとしています。

 「半導体・航空宇宙・医療・クリーンエネルギー・CASEといった今後の成長市場において、当社グループが持つ高合金技術や重希土類フリー磁石技術は世界的にも競争力を持つ領域であり、積極的な戦略投資も実行している。従来の『特殊鋼専業メーカー』という枠を超えて、これらを核にした事業ポートフォリオ転換を果たすことで、『高機能素材のグローバルリーダー』を目指そうと考えている」

 「この変革を市場で形にするのは、お客さまと接する機会が多い営業部門の役割だ。当社は、はるか昔からお客さまに寄り添う営業を心掛け、得意としてきた。今後もお客さまの工程や装置、最終製品まで踏み込んだ深い理解をもとに、社内の新製品開発部門や製造技術部門と一体となって新たな用途を創り出す『マーケットイン型』の営業活動へと進化させ、ニーズに応える提案力を磨いていく」

 「重点顧客との共創も強化していく。自動車、航空宇宙、クリーンエネルギーといった分野では、開発段階から将来のロードマップを共有しながら共同で価値を創る姿勢が求められる。語学力を含めて海外で通用するグローバル人材も育成して、グローバル顧客との関係強化にも取り組み、海外売上高比率も高めていく」

 「成長市場製品の拡販を軌道に乗せるには、収益力の強化を徹底する必要がある。売上げの拡大だけでなく、案件ごとの質を高めたい。高合金、半導体、航空・宇宙といった高付加価値領域に営業リソースを集中しつつ、価格戦略の高度化や低採算案件の見直しを進めていく。営業自らが『利益の番人』として機能するとともに成長市場に向けた製品戦略を先頭に立って推進していく」

――2月に日本高周波鋼業を完全子会社化し、10月に東北特殊鋼を完全子会社化する予定です。営業戦略にどう生かしますか。

 「日本高周波鋼業、東北特殊鋼の完全子会社化は、当社グループのサプライチェーンと製品ラインアップを再構築する大きなきっかけにしたい。営業部門としては、この再編を単なる組織統合にとどめず、市場での競争力強化につなげることが最大の課題だと考えている」

 「一つ目は、グループ全体での製品・用途ポートフォリオの最適化だ。大同本体の製品に加え、日本高周波鋼業の高合金、ステンレス鋼、工具鋼、東北特殊鋼の特長製品や電磁ステンレス鋼といった強みを組み合わせて、効率化・最適化を最大限追求し、コストダウンにつなげていく」

 「二つ目は、顧客共創の深化だ。グループ各社が持つ技術・設備・加工ノウハウを横串でつなぎ、またグループのグローバル販売チャネルを生かすことにより、従来は各社単体では取り切れていなかった案件や新規用途を獲得していくことを目指す。特に高機能ステンレス鋼や高合金、工具鋼など、グループ内で補完関係にある製品群は、共創型経営の効果を最大化していきたい」

――2社の完全子会社化により営業の役割が一段と重要になる中で、グループ全体の営業力強化については。

 「グループの力を最大限に引き出し、成長市場で確かな存在感を示すために、各種の取り組みを加速していく。グループ中核商社である大同興業との連携強化も重要な命題だ。いかに大同興業と営業戦略を共有し、大同特殊鋼と一体で営業強化していくか。この道筋を早く付けていきたい」

 「海外のグループ連携も強化する。北米・欧州・中国・ASEANに展開する現地法人の販売体制や特殊鋼二次加工、サービス機能をさらに整備して、受注拡大につなげたい」(谷山 恵三)