各種鋼材販売業の東京鋼材(東京都墨田区、社長・伊藤博一氏)を中核企業とするITOグループの群馬鋼材が、県内邑楽郡千代田町舞木地区への拡張移転を終え、操業を開始した。概要を紹介するとともに、これまでの経緯と歩みも振り返る。
旧工場、業容拡大で手狭に
群馬鋼材(社長・伊藤祐太氏)の設立は2015年10月。東京鋼材と長く取引関係にあった地場薄板加工販売業の新栄鋼業が廃業するに当たり、高齢で後継者不在だった同社創業者の田中尚道社長から、信頼の厚かったITOグループ創始者の伊藤壽郎氏が事業承継を打診され、引き継いだ経緯がある。
伊藤壽郎氏は、長男・博一氏、次男・祐太氏の父で今年2月に死去(享年77歳)。一新した群馬鋼材「群馬加工センター」完成・本格稼働を、天国で目を細めながら見て喜んでいるに違いない。
新栄鋼業の跡地(邑楽郡千代田町福島705―1、敷地1780平方メートル)にファイバーレーザ切断機や折り曲げ加工機を新設し、シャーリング機など既存設備と併せて16年春から操業開始した群馬鋼材。伊藤祐太社長の指揮の下、鋼板類を主体に各種鋼材や非鉄金属を含めて地場の顧客からの小口・即納ニーズを満たしながら受注増につなげる。迅速できめ細かな対応力が評判となり、取引先も増やしながら業容を伸ばしていった。
この間にも加工設備を増設し、能力強化を図ったが、それに伴い工場内が手狭となる。拡張の余地もなく、顧客へのQCDサービスを高めつつ、事業を継続・成長させるためにも、拡張移転を決断し、新天地を物色した。
近隣に新天地を取得
22年2月に、近接する千代田町舞木地区でアルマイト加工業のマルヤマが倒産。売りに出た跡地(舞木2795、敷地1万2210平方メートル)を取得する。構内に、新たに工場建屋と事務所棟を新設。もともとあった既存建屋1棟はリニューアルし、工場2棟、事務所1棟で構成する新生・群馬鋼材「群馬加工センター」が完成した。
新設した工場建屋の施工・管理は日東工営が手掛け、日鉄エンジニアリングのシステム建築「スタンパッケージ」を採用。新事務所棟は地場ゼネコンの横山建設が担当した。
新設建屋を「鋼材加工棟」とし、既存建屋を「溶接・塗装棟」としてすみ分けた。
圧巻のレーザ3台縦列/「フューチャースペース」も
鋼材加工棟でまず目に入るのが、12メートルまでの長尺パイプ・形鋼専用の三次元ファイバーレーザ加工機「FG―400NEO」(発振器出力4KW、ヤマザキマザック製)。
同じ東京鋼材グループの千葉鋼材「千葉加工センター」には、最大8メートル材の三次元レーザ加工機を保有するが、最近は10メートルを超える加工注文も多く、顧客ニーズを満たすため群馬には最新鋭の12メートル仕様を導入した。
併せて5×10材用の二次元ファイバーレーザ加工機「ML3015GX―F60」(出力6KW、三菱電機製)を2台新設。これら最新レーザ3台が縦列する光景は圧巻だ。
ここに、旧工場から移設した三菱電機製の4KWファイバーレーザとアマダ製の9KWファイバーレーザ(いずれも5×10材用)も加わり、レーザ加工能力を大幅に高めた。
さらにはワーク寸法1・27メートル×1・27メートルに対応した小型タイプの薄物用超精密ファイバーレーザ「PRELAS―AJ」(出力1KW、アマダ製)では、1ミリ以下の真鍮のワッシャー製作や、時計の中に組み込むような超小物微細部品の加工オーダーに応える。
大小計6台のレーザで「多種多様な素材をコンマ台から25ミリ厚程度まで高品位加工」するのが〝売り〟だ。
二次加工設備では、幅4メートル、板厚10ミリ前後までの高精度折り曲げ加工が可能な広幅厚物用ベンディングマシン「HRB3504」(加圧能力350トン、アマダ製)を新設した。移設してきた折り曲げ加工機(コマツ製)と併せて折り曲げ能力も増強している。
鋼材加工棟には、そのほかにもシャー2台とバリ取り機1台を移設。構内でのモノの流れを考慮した効率的な設備レイアウトとした。
構内には、まだスペースに余裕がある。ここは、今後の受注動向に応じて如何様にも柔軟に有効活用策を構想できる「フューチャースペース」と位置付け、当面は材料ヤードとして運用する。
建屋の天井高15㍍
鋼材加工棟に隣接する既存建屋を「溶接・塗装棟」とし、ここではさまざまな製作物や製罐品の溶接・組立と最終塗装を手掛ける。
構内の環境対策を万全にし、塗装ブースは蛇腹式の開閉テントを設置し、溶接・組立ブースには最新の溶接ヒューム集塵・空気清浄装置(オーデン製)を取り付けてある。
建屋は、天井高が高く、最大箇所で15メートルある。かつてここがアルマイト工場だった名残を偲ばせるが、長尺でタッパの高い大型鋼構造物を製作・製罐できる能力を備える。
棟間をフォークが往来
この溶接・塗装棟が、新「群馬加工センター」の武器となる。鋼材加工棟とは、双方の建屋の中央部分で開口扉を設置。棟間を、フォークリフトがスムーズに行き来することで機動力を発揮する。
同じ敷地内で、ヨコ持ちにかかる作業負担や時間のロスなく、鋼板類をはじめパイプや形鋼、非鉄金属類の一次・二次加工を経て製作・組立そして最終塗装まで一貫できるので、品質・納期面で顧客満足度を高めつつ、競合先との競争優位性も創出できるわけだ。グループ一体運営の戦略方針のもと、同じように各種鋼材の複合一貫体制を整える千葉鋼材「千葉加工センター」とも連携し、、神奈川鋼材も含めて関東一円をテリトリーに受注間口を拡げるべく、これからのグループ営業活動にも力が入る。
千葉加工センターの倍
新生・群馬鋼材「群馬加工センター」は、その規模の大きさも魅力の一つだ。単体事業所としての敷地面積はグループ最大で、千葉加工センター(千葉市中央区、5330平方メートル)の約2倍の広さとなる。
敷地内には、今後の業容拡大次第では工場建屋をさらにもう1棟建てられるスペースもあり、グループにおける中核拠点への成長が期待されている。
伊藤社長も「コンマ台から厚物まで、短尺品から長尺材まで『切れないモノはない』し、鋼板類も形鋼類も扱い『何でも造れる』念願の工場がようやく誕生した」と自信を漲らせる。5月から操業したが、約1カ月半を経て「立ち上がりは上々」とのこと。6月上旬には、溶接・塗装棟内にバンドソーも新設。その据え付け作業を終えたことで初期の設備体制が整った。
建屋カラー、景観にマッチ
2棟の工場建屋には太陽光発電パネルを敷設し、再生可能エネルギーを活用した省エネ工場運営に取り組む。鉄骨3階建ての事務所棟も、最新鋭のOA機器を採用したほか、憩いルームや宿泊施設も設け、現場・事務スタッフにとって働き甲斐のある空間とした。
事務所棟、工場棟ともに外観カラーは、やや赤みがかった茶色が基調。造園が盛んな地域の景観にもマッチした、落ち着きのある雰囲気を醸し出しており、労働意欲を駆り立てる。(太田 一郎)












