全特協30周年・久木田会長
全特協30周年・久木田会長
正会員数推移
正会員数推移
特殊鋼流通企業の採算状況
特殊鋼流通企業の採算状況
全特協30周年・久木田会長 正会員数推移 特殊鋼流通企業の採算状況

 全日本特殊鋼流通協会(全特協、会長・久木田至櫻井鋼鉄社長)は今年12月、社団法人の認可取得から設立30年を迎える。これまで交流促進、情報発信、人材育成などの面で業界を支えてきた。そしてきょう15日、パレスホテル東京(東京都千代田区)で定時総会後に設立30周年記念行事を開く。今回の節目を機に、業界を取り巻く現状の課題や今後の展望について久木田会長に話を聞いた。

――特殊鋼流通団体の全特協が社団法人となって30周年を迎えたが率直な感想は。

 「まずは初代会長の故井上豊治氏(旧井上特殊鋼社長)をはじめ社団法人設立に奔走された先人の方々に感謝を申し上げたい。全特協の会員は中小のオーナー企業が中心となっているが、メーカーとお客さまのはざまで好不況時とも大変辛い立場になることが多い。ただお客さまが必要とされる商材をメーカーから仕入れ、それを必要な量、必要なタイミングで提供するサプライチェーンの中でなくてはならない存在だ。その重要な役割を流通自身が認識することと広く社会にPRしていく上で社団法人化したことは大変意義のあることだと思う」

――現在の主な活動状況は。

 「人材育成、調査研究、内外交流、経営効率化などの各委員会が活動している。人材育成では1976年に創設した特殊鋼販売技士、95年に始まった特殊鋼販売加工技士の団体資格制度を実施している。二つの資格認定者は累計で2万8千人に及び会員各社の人材育成で重要な役割を果たしている。さらに正会員以外のメーカーや商社などの資格認定者もおり業界全体の発展に寄与している。また最近では研修のWEB化を進め受講しやすい環境を整えている」

 「調査研究では月次の流通統計調査や四半期ごとの景況アンケート、年次の経営環境等調査を実施し、会員の経営の参考にしてもらっている。これらの結果はホームページでも公開し当業界の情報発信をしているので多くの方々に利用していただきたい。また内外交流では、本部や支部主催で欧州やアジアを中心に海外視察研修を行っている。海外のメーカーや流通、自動車産業などを訪問し、知見の習得を図り結果を会員に周知している。この海外研修の結果報告も一部をホームページで公開している」

――設立から30年を経て特殊鋼流通を取り巻く環境が大きく変化したが。

 「一言でいえば厳しい環境が30年でますます厳しくなっている。全特協の正会員数で見ても、法人化した96年3月末は407社だったが、今年の3月末は211社とほぼ半減した。これはユーザーの海外移転や輸入材増加も含めた内需の減少、後継者不足などが要因だが、今後も厳しい経営環境が続くと思う」

――厳しい経営環境下での全特協の役割は。

 「環境が早急に好転することは期待できず、M&Aや廃業は避けて通れないと思う。そういった中でも会員には新規の需要開拓や加工部門への参入、DX化などに関する有用な情報を提供し事業継続の手助けをしていきたい。また従来から実施している交流の場や各種講演会を通じ新たな経営のヒントを得てもらえればと思う。これまで支部単位で行っていた行事を東日本、西日本のブロック単位でも実施すれば交流の場が広がると思う」

――2024年の会長就任以来『適正な利益確保』『儲かる流通業界』をテーマに掲げているが。

 「流通はメーカーとお客さまの間の辛い立場だと先ほど申したが、まず機能を磨くなど自己研さんし選ばれる事業者にならないといけない。その上で仕入れ値や人件費・輸送費などの上昇をしっかり説明し受け入れてもらえるよう努めることが肝要だ。全特協としては今年1月に施行された中小受託取引適正化法の浸透や中小企業庁が3月と9月に実施している価格交渉促進月間を有効に活用するよう会員に周知していきたい」

――これからの業界の発展には次世代の若手の力が必要になる。

 「今後も厳しい経営環境が続きそうだが、特殊鋼流通に将来性がないとは思っていない。AIの活用やロボットの進化、宇宙探査、深海の海洋開発など人類の進化に必要不可欠な最先端の製品には高機能の特殊鋼は欠かせず、広く多くの分野に活用されると確信している。現在の若手が経営の中心になる頃には、需要先や鋼材に求められる機能、流通の形態など現状からは想像できないほど様変わりしているかもしれないが、特殊鋼が社会に必要とされる素材であることは間違いない。全特協の青年部会には次世代を担う人材にたくさん参加していただいているが、さらに多くの若手次期経営者が集まり、交流を深める中で自社のみならず業界の発展のため新しいことに挑戦してほしい」(橋川 渉)