細物小棒メーカーの三興製鋼と向山工場による共同販売会社、ウインファーストはきょう6月2日に創立20周年を迎えた。鈴木史郎会長と向山敦社長にこれまでの歩みと今後の展望を聞いた。(村上倫、文中敬称略)
――20周年という節目を迎えての感想から。
向山「非常に早く時が過ぎたという印象だ。設立当時は9~10人規模だったが、今では25人ほどに拡大した。当初から予定されていた共同購買事業は3年前にようやく立ち上がり、両工場の情報交換も活発化した。購買は製造と密接に関係し、製造技術など双方の技術情報も交換でき相乗効果も発揮している。電炉1社では3人程度で30万トン規模にとどまり、できることが限られる。鈴木会長は『営業は数が力』と当初からおっしゃっていたが、1社では絶対にここまで来ることはできなかった。特に情報力が大事な世の中となり、この20年を共に歩むことができて本当によかったと思う。建設業界の人手不足は深刻化しベテランも減っている。ウインファースト(WF)の営業マンが業界に残る生き字引として少しでも知識を継承するお手伝いができればと思っている。我々が掲げるゼネコンや商社に対しての『ソリューション・カンパニー』を実現できる体制はできてきていると、今後20年への期待も込めて思っている」
鈴木「私もあっという間に20年たったという思いが強い。20年前は非常に若い社員が多い会社だったが、それなりにベテランも増え、業界の中でもいろいろな立ち居振る舞いやご提案ができる会社となった。皆さまに育てていただいたという思いを強く持っている。私見だが立ち上げ当初は『WFは何の会社なのか、向山さんと三興さん2社でやっているというのは分かるが、やって何の意味があるのか』というお問い合わせが多く、私自身もそれに対して『業界再編を見据えた会社です』というその一つの答えを持って対応していたが、なかなかご納得いただけなかった。しかし、向山社長以下皆さんの頑張りで業界の中でも鉄筋に関しては『WFに問い合わせれば何でも応えてくれる』という体制をつくっていただけたのではないか。この20年間でWFの存在価値というものを築き上げていただいたと認識している」
――当初どのような経緯でWFが発足したのか。
鈴木「向山工場と三興製鋼の協業という話があったのが昭和54年と聞いている。業界が厳しい、あるいはこれから厳しくなることが想定される時にこうした話が大抵出てくるが、何かしらやりたいということで2社が話を始めたようだ。しかし、その後すぐに業況も好転し、もう少し様子を見ようとなり実現には至らなかった。次に話があったのが1999年と記憶しているが、この時は鉄筋の関東のベース価格が3万円を切り、需要面もあまりこの先期待が持てないということから業界再編の機運が高まったようだ。既に関東の細物小棒メーカー4社で構成する電炉九粍棒鋼協同組合もあったが、さすがに4社を一気にまとめてという話は難しいということで、じゃあ最も懇意にされている向山さんと三興さんで話をされたらどうですかという話があったと聞いている。また、2社の業界に対する今後への危機感からWF構想というものがまた始まり、いろいろと時間はかかったが06年にまずは営業部門を統合した販売会社の設立に至った」
――この20年で苦労したことは。
向山「挑戦の連続だった。2社が一つになって利点も非常に大きかったが、三興と向山それぞれの文化がすごく濃かった。一つの会社の方向性として三興だけ、向山だけの利益ではなくWFの利益のために働く、みんなの利益のために動くという意識への変革がまずは大きな挑戦だった。各営業マンには知識など積み重ねた財産がある。それを全部オープンにして全体のために最適化するまでに数年かかった。これができたことが非常に大きく、次のステージにチャレンジしていくことができた。営業スタイルもだいぶ変わり、相互の良い部分を取り入れて顧客管理もシステム化し、それぞれが行ったことを共有化する企画管理システムを構築して運用し始めている。製品開発もソリューション・カンパニーとしてお客さまのニーズを極力拾って、何が必要なのかを考えて製品開発を進めた。それをお届けするに当たっては、今までのただ通うだけの営業ではなく技術的なものを理解し話ができるよう営業マンのレベルアップも促し、変革してきた部分がある」
――大きな変化は。
向山「当初は共同購買を行っていなかったが責任者として商社出身の購買本部長を採用し、ニュートラルなWFの立場として工場へ入り込んでもらい、いろいろと調整してもらいながら共同商談に持っていった。当初は電極や合金鉄などメインの資材関係だけを扱っていたが、ワンチームでWFが各メーカーと話し合いをしながら決めていくようになったことは大きな変化だった」
向山「鉄スクラップに関しては各メーカーが地場で調達せざるを得ないが、情報共有はしている。今後高炉メーカーが上級スクラップを活用していく中でなるべく低級スクラップを活用した製造へ持っていきたいという話もまだ未熟だができるようになってきている。お互いの配合などもオープンにし、こんな形にできたらということを研究している状況だ」
鈴木「20年前に現在のWFの姿が想像できたかと言えば全くできなかった。革新的な変化があったと実感している。共同購買は、構想はもともとあったが困難で実現しないのではないかと思われたが、向山社長がうまくアレンジして導いてくれた。時代やお客さまのニーズに合わせて取り扱い品種が増えていったが、良いものを確実に購入するという切り口から2社で行うことで購買力も高まり、頼もしい形になったと思っている」
――発足当初の構想としては将来的な統合が視野にあったと思うが。
向山「個人的にはやはりそれが自然の姿だと思っている。両社が50%ずつ出資してWFという会社を造ったがまだ結婚しない状態のままでいるイメージだ。今後さらなるパートナーシップの強化は自然な姿だ。また、それにとどまらず電炉メーカーのさらなる再編は不可避と皆感じているのではないか。それぞれの思惑や考え方はあるが、再編のタイミングがまた出てくると思っている。そのような際に再編の受け皿として求められる存在になりたいと考えており、魅力ある会社でいなければという思いが強い」
鈴木「これもまた完全に私見だが、今両社が完全合併という話はまだないのではないか。ただ、自然体でそういう機運が高まった際には最初にお話させていただくパートナーが向山工場だと思っている。三興製鋼がパートナーにふさわしいと思っていただけるような企業体を維持しなければならないと思っている。現在の需要環境を見ると少ない需要量の中で仲良く永遠にやっていければ一番幸せだが、そういうわけにもいかないだろう。全体最適を目指してどうすればいいかという時に、もう少し踏み込んだ協業を考えるタイミングがくるのではないかと認識している」
――現在の事業規模は。
向山「当初は1社年間30万トン強を扱い計65万トン規模だったが現在は国内で1社25万トン規模の計約50万トン。売上高は580億円程度で量は減少したが、製品価格の変動もあり20年前とあまり売上高は変わっていない。ただ、需要量が20年前の1千万トン規模から25年度は4割以上落ち込んでいる中で扱い量は2割強の落ち込みにとどまっている。これは2社での共同販売も寄与しているのではないか」
――WFの強みは。
向山「やはり人ではないか。人材を育成するのは本当に難しいと、この20年間で感じた。当初30代前半の社員が多く若い会社ができたと言われていたが、そのまま皆50代になった。設立3年目くらいからその下の世代を育てるべく採用を開始し、4~5人を採用したが現在残っているのは1人。やはり人を育てる体制が構築できておらず、会社の経営理念やパーパスのようなものもなかった。4年ほど前に会社の方向性をしっかりと定め給与や評価制度も再構築した。会社の目的やKGI(重要目標達成指標)のKPI(重要業績評価指標)、そこに向かう個人目標とモチベーション維持・向上などしっかりと対応していかなければいけないとようやく気付いたのがこの4~5年。ようやく人を育てる環境になってきた。若手も5人ほど加わり順調に育っている。こうした人を育てる器をWFでつくることができた。個社で取り組んでいると本当に採用できない。また、営業マンは本当に育てるために時間がかかるがWFだからこそ育てられている。それが営業力につながっている」
鈴木「私も同意見で、お客さまが『この人に話せばやってくれる』という安心感や信頼感を持つ人材を育成できたのは、この20年間で培った大きな強みだと感じている。モノがない、厳しいという時に相談すれば、WFで対応できなくてもいろいろと別の提案もできる形になっている。時間はかかったが20年という営業経験が生きており、それを承継する体制づくりもできつつある。自信を持って強みだと皆さんにお話できると思っている」
向山「約2年前に業務企画室を立ち上げたが、1社ではできない部署でSNSでの発信を含めた会社のブランディング強化に携わっている。『識学』(意識構造学)を会社に浸透させる社内講師的な役割も担っており、認定制度として定期的に社内研修も行っている。X(エックス)での発信やWFのキャラクターも作成してもらった。電炉メーカーの営業の女性事務職スタッフは仕事の繁閑に跛行性があるため、業務企画室の管轄として会社全体の仕事を受けてもらっている。これによって最適化を図ることができ、女性社員のモチベーションも上がっていると思う。男性社員も営業活動により注力でき、より合理的な動きができるようになった。現在4人体制だが兼任では本業に偏ってしまいなかなか深掘りできない。専任で取り組む分野だと感じている」
――共販会社だが溶融亜鉛めっき鉄筋やグリーン鉄筋など製品開発も行っている。
向山「WFが主体性を持って製品開発を進めていくことは社員の喜びでもあると思っている。社員のモチベーション向上にもつながり『さらに新しい開発を』と、人が育つプロセスの一つの結果とも言える。めっき鉄筋やグリーン鉄筋も個社でもできるが、より皆がやる気になる方向を模索した結果そうなったのではないか。WFとして社員のプライドを持って販売したい」
――今後さらに20年、30年先に描く会社像は。
向山「電炉メーカー再編を視野に入れて受け皿会社になるという理想を考えると、もう少し他のエリアの電炉メーカーも含めた提携やパートナーシップを拡大することはありだと思っている。また、技術をもう少し磨いて開発力を高め、新たな製品を提供したい。建設業界で鉄筋を拡販するには鉄筋コンクリート(RC)造の普及が必要だが、RC造普及にはRC建造物の原価低減が求められる。また、職人の手間がかかるとよく言われており、省力化させていかねばならない。ユニット化や製品開発でどこまで協力できるかがカギとなりそうだ。かつて鉄骨造は工期は短いが1・1倍か1・2倍は高いと言われていたが、今ではRCの方が高い。生コンのコスト高もあるが職人の管理の手間などが結構かかる。手間や工期を減らすことができる提案が可能なサービスに持っていかなければならないと思っている」
向山「もう一つは、やはり共同購買事業は大きい。今後はWFが仕入れ窓口となって各メーカーに提供していく機能を持たせていきたい。また、鉄源対策ももう少し真剣に検討していかなければならない。スクラップを含めた戦略的な動きを2社よりも3社、4社となれば共同購買の力を発揮できる。そこも考えていきたい」
鈴木「06年からの20年間で需要は4割ほど減少した。通常であればこれだけ量が減ると会社の規模も小さくして人も減らしてという形になりがちだが、WFは倍増している。品種の拡大などもあるが、お客さまのニーズに対して確実なサービスを行うにはやはりこの人数が必要だということ。お客さまのニーズが多様化する中でどのようなサービスが提供できるかを考えると、さらなる人員体制の強化が必要ではないか。また、WFへの参加企業を増やしていくことだが、立ち上げの際に公正取引委員会から価格のコントロール力への懸念を指摘された。そこを考慮すると関東でパートナーを増やすことは心配な面もある。従って他の地域のメーカーからお話が頂けるのであれば進めていきたい。購買に関しても最近は確実にモノを手当てしていくという面から、関東地区に限らず他地区のメーカーとの協力体制を進めていくべきではないかと思っている。そのためにはやはり魅力のある組織づくりが必須だ」
――理想の会社像は。
向山「策定したパーパスやミッションを実現できる会社にしていきたい。そのためにも人の変革がもっと必要で、自立的に成長できるフェーズに入っていかなければならない。皆が有機的に動ける組織が理想。次世代をいかに育てるかがWFのこれからにつながる」
鈴木「会社の立ち上げ当時はきっちり売ってくればいい、コストセンターだという形でスタートしたが、若手社員のモチベーションを高めるためにもプロフィットセンターを混ぜていくような形をとってもいいのではないかと考えている。自分で大きく稼げるんだと感じられるようになれば」
向山「社員が期待を持てる、働いていて幸せな環境をつくりたい」





