――まずは創業90周年を迎えた率直な感想をお聞かせください。
茂夫氏「『四方良し』の精神で何とか90周年を迎えることができ、全ての人に感謝したい。年々、厚板業界は厳しい情勢の中にさらされているが、これからの当社グループの事業を維持、そして成長させていくためにさまざまなことを考え、実行していきたい」
喜哉氏「厚板溶断業はサプライチェーンの中間工程であり、いろいろなパートナーと絆を深めながらきょうを迎えることができた。お客さま、仕入先、機械・ガスメーカー、輸送会社、金融機関など当社と関わる方々の協力を得て90周年を迎えることができた。感謝するとともに、当社は縁に恵まれていると改めて感じている」
――思い出深い出来事は。
喜哉氏「私は2012年11月に娘婿として当社に入社した。入社当時、80年以上の歴史のある当社の歴史を知りたいと思い、足跡をたどることにした。当社が本社を構えていた天王寺区を訪れ、たまたま入った金物屋で、地元住民が記憶をたどって製作した戦時中の地図を見せていただいた。そこには『鉄工所菰下』と記載されていた。また、『昭和13年大阪市および近郊の電話番号簿』にも『鉄鐵精密鎔断』と記載されており、歴史を感じるとともに、90年間脈々と受け継がれてきた想いを受け止め、取引先の役に立ち、喜ばれる仕事を継続していきたいと実感した」
茂夫氏「印象深いことはたくさんあったと思うが、昭和50年代はオイルショックで一時期、仕事が全くなかったことは鮮明に覚えている。販価を下げても売れる状況ではなかった。当時を思い起こせば何もすることがない中、草むしりなど清掃することしかなかった。この辛さが脳裏に残っており、当時を思い起こせば、リーマンショックやコロナ禍などは大したことはない」
――世間では厳しいと言われている直近のマーケット環境に対し、どのような戦略を立案しますか。
茂夫氏「2026年3月期も厚板需要の低迷は続いており、もうけることが難しい局面が続いている。しかし、洋上風力や造船関連の需要が出始め、需要回復は来々期半ば以降になるだろう。需要が回復した時にしっかりと案件を獲得できるように、溶断だけでなく、二・三次加工まで一貫対応できる体制を強化している。その一環で、ちきり事業所には多種多様な二・三次加工設備を導入し、現在は倉庫建設も進めている。そのほか、2年後にはちきり事業所に隣接する岸壁が使用可能となり、ヤードが整備される予定。海上輸送などが可能となれば、事業拡大に向けた次の一手を考え、実行していく」
――設備だけでなく人材確保・教育にも注力しています。設備と人材の両輪を強化しながら、これからの時代をどのように勝ち抜いていきますか。
喜哉氏「人材育成を将来の競争力と位置付けており、厳しいマーケット環境下でも人材採用は継続している。今年4月からは新卒が8人入社し、中途採用も実施している。平均年齢は30代半ばで、若い世代が増えており、素直で一生懸命働いてくれている。これまで当社が築き上げてきた想い・技術をしっかりと受け継ぎ、私を含めて皆が誇りを持って仕事をすることで企業として発展し、社会貢献につなげていきたい。時代は変わっても『四方良し』の精神は変わることはない。当社と関わる1社1社との縁を大切にするとともに、パートナーとしての連携をより一層深めていきたい。そして、厚板溶断加工で日本のモノづくりを支え、技術と信頼で未来を切り拓いていきたい」
茂夫氏「若手・次世代の人材には、正しく基本を身に付け、応用力を養い、技術や経営感覚を習得してほしい。グループを含めると350~400人となる。個社単位で実力を高めながら皆が幸せになれるように、しっかり利益を生み出せる企業体質を構築していきたい。そして時代の流れに沿った事業を展開しながら、これまで通りの『四方良し』の精神を持ち、飽くなき挑戦を続けていきたい」



