全国厚板シヤリング工業組合(=ZSK)に所属する独立系の若手・中堅リーダー4氏に、厚板シャー・溶断業界を取り巻く事業環境やそれを踏まえた経営課題、組合活動への参画意義、ZSKに対する期待や要望などをテーマに、座談会形式で忌憚なく語ってもらった。4氏は現在、ZSKの事業委員会または企画青年部会に所属するメンバーでもある。(聞き手=本紙・太田一郎記者)
――厚板シャー・溶断業(以下=シャー業)を取り巻く市場環境認識から伺います。
自見氏 国内経済の成熟化と少子化進行が著しく、特に少子化問題はわれわれ中小企業にとって「喫緊の課題」であり、現実問題として「人手不足」をひしひしと実感する。人の採用が本当に難しい。
酒匂氏 人口減少は「消費の低下と需要全体の縮小」を意味し、その中で鉄鋼メーカーや商社は国内系列企業の統合再編を推し進める一方、シャー業はわが社も含めて「家業」が多く、家業を守ることを最優先する。従ってわれわれが置かれていた市場環境は「淘汰の世界に入った」と危機感を募らせている。
加藤氏 少子化もそうだが「働き方改革」を契機に、われわれの生産活動スタイルがかなり変わった。要は、日本人の生活様式が変わり、それに伴ってルールが変わったことを認識する必要がある。
阿部氏 北海道については今後も大型建設工事が続くと言われるが、ある一定規模を超えるとゼネコンが全国発注するので結果的に大部分を本州で造って道内に運んでくることになる。一方、北海道は中小物件が少ないので、地場シャーが手掛けられる切板ボリュームがどれくらいあるのか精査する必要がある。
――それを踏まえ、どのような経営課題を。
自見氏 顧客ニーズが「量的ニーズ」から「機能に対するニーズ」に変わった。従って「変化に対応できる力を備えた現場づくり」に全精力の7割を費やし、そのための意思力・技術力・忍耐力を消耗・息切れさせないことに3割のエネルギーと頭を使って会社と現場をかじ取りすることが経営者の務めだ。
酒匂氏 淘汰の世界では「生き残りを賭けた勝負」になるから、目下の構造的な買い手市場において取引先から「この会社から買いたい」と言われる機能を備えることが不可欠。顧客ニーズを的確に捉え、量で稼ぐのではなく加工の質を高め、それを個社の付加価値として認知されることがポイントとなる。
――加工業としての原点回帰ですね。
酒匂氏 資源の無い日本が経済大国となったのは、製造立国としてモノづくりに精励したからであり、それを縁の下で支えたのが「加工技術力」だと思う。改めてその原点に立ち返り「うちならでは」のオリジナリティを備え、それを自社の強みにできるかどうかが優勝劣敗の明暗を分けるカギだと思っている。
――シャー業の「あるべき姿」をどのようにお考えですか。
加藤氏 私はつねづね、シャー業が「切板だけで食っていける世界」でありたいと思っている。そのためにも取引先に切板の価値を再認識してもらい、かかるコストについても理解を促し、採算に合わなければ断ることも必要だ。その上で二次加工を求められたら、それを付加価値として収益性を高めればいい。
阿部氏 切板だけで収益確保したいのは当然だが、北海道の地域性を踏まえれば、もうそのステージは超えた。切板に固執せず、むしろ切板を「呼び水」にして次工程の川下加工をプラスし、総合力として付加価値を提供する。切板から製罐までのトータルパッケージで価値を提供することを推し進めていく。
自見氏 「数量ありき」の商売スタイルは終わったので、ボリュームではない部分、すなわち二次加工や小ロット短納期対応、品質証明といったトータルサービスを提供し、顧客にとって「任せて安心」な存在になれば注文が集まる。量を追わず、違う価値を探求した結果が量につながる取り組みが必須だ。
酒匂氏 根本的には「顧客ニーズを的確に捉えて応える」ことがシャーの使命となる。そして他社が真似できない独自技術を身につけ、それを「うちならでは」の価値・機能として認められ、高く評価してもらえるよう強くアピールし、持続的な受注につなげることだ。
――ZSKの存在意義をどう感じていますか。事業活動や取り組みへの期待や要望もお聞かせ下さい。
自見氏 大前提として、厚板サプライチェーンの中間に位置するシャー業は川上と川下に翻弄されやすい弱い立場にあり、地位を確立しようにも個社でやれることには限界がある。だからこそ「シャーはかけがえのない存在」だとサプライチェーン全体に示すことができるのは「業界団体ならではの力」だ。
――おっしゃる通りですね。
自見氏 ZSKの取引適正化活動が、まさにそれに当たる。加えてZSKはオーナー系の若手経営人材に組合運営の活力源になってもらっている点も特筆すべき。彼らの頑張りは、新たにこの業界に入ってくる若者たちに「こんなに素晴らしい仲間や先輩たちがいる」と希望の光を与えると期待している。
酒匂氏 私も2点あり、一つは行政とのつながり。取引適正化など充実した組合活動を展開する上で経済産業省と直接対話できる点は大きい。また、外国人材活用における「特定技能制度」の業種指定に「鉄鋼シャースリット業」の追加を強く働きかけ、閣議決定にこぎつけた。われわれの「声」が国を動かした象徴的な成果であり、誇りに思う。
――もう一つは。
酒匂氏 全国レベルでの交流。地域ごとの支部活動も有意義だが、全国青年交流会や鐵人フォーラムを通じて地域を超えた同業者と「仲間」と言える関係を築くことができた。彼らから刺激を受け、思いもよらない発想や気づきをもらえるのは本当にありがたい。
阿部氏 私にとっても、交流の場が確立されているのが大きい。経営者であれば、地域や規模は違っても商売や事業に対する考え方の本質は同じ。それを踏まえて全国の仲間と接し、他社の取り組みを知ることは本当に勉強になる。実際、他社のやり方をわが社に採り入れ、取引先に喜ばれたケースもある。
――自社のビジネスに役に立つとメリットを実感しやすいですね。
阿部氏 ZSKは労働安全衛生や環境問題にも熱心だし、生産・技術系でも「セッサタクマ会」や「職場改善発表大会」など同業者同士だからこそ共通する経営課題について情報やノウハウを共有する事業も定例化している。こうした活動をブラッシュアップしながら継続してもらいたい。
加藤氏 私が所属する東海支部は若手層の交流が盛んで、気心の知れた地域の同業者に経営の悩みを相談し、現場の問題解決策もざっくばらんに聞ける場があるのがありがたい。全国青年交流会も定着し、各地の仲間と同じ課題を共有し、情報交換しながら経営のヒントを得られることにも意義を感じている。
――節目を迎え、新たな一歩を踏み出すZSKへの提案や要望を、未来志向でお聞かせ下さい。
阿部氏 ZSKを通じて知り合った縁で全国各地に足を運ぶ機会が増えた。同業の工場見学は参考になることが多く、自社に生かせるヒントをいただけるので、これを組合ベースで実施してほしい。その場に参加できない仲間には動画を撮って配信するなど「ZSKバーチャル工場見学会」をお願いする。
酒匂氏 シャー業に関係する加工機メーカーや自動化・制御系システム・ソフトウエア企業が、われわれに「PRさせてほしい」という要望は多く、われわれも未知のメーカーの技術やアイテムを知りたいと思っている。そこでZSKが、組合員に周知・紹介する窓口を担い、PRの場を設けたらどうだろうか。
自見氏 シャー業やZSKのキャッチコピーを作ったらどうか。実はZSKのある方に、某ゼネコン大手が以前、企業のキャッチコピーをテレビCMで流したら世間が注目し、3Kだった建設業のイメージがガラッと変わったことがあったと伺った。それにあやかるのも一案だと思う。
――SNSが発達し、情報発信の仕方も多様化した今こそ従来の慣習だけにとらわれず、自由で柔軟な発想でアイデアを募ってみるのも面白いですね。
加藤氏 私は「業務別協業」の相談・斡旋窓口をZSKが担ったらどうかと提案したい。
――業務別協業というと…。
加藤氏 シャー業とひと言でいっても、個々に得意分野や形態・向け先が異なる。一方で国内の切板需要が構造的に縮小していく中で各々が個別に設備投資すれば業界の供給能力が増え、設備過剰の懸念がある。そこでZSKを介して「A社は何が得意」「B社はこんな注文を欲しているから委託しよう」といった組合員企業間の相互連携を促進すれば、過度な設備投資をせずに済むと私は思う。
――容易ではなさそうでも、業界全体で対策を検討・模索すべき重要なテーマですね。
加藤氏 人手不足問題も視野に、後継者不在で将来的な事業継続が困難な組合員企業があれば、M&Aまではいかなくとも部分的な事業・業務を承継するとか、やり方はいろいろあるだろうがそういう相談がざっくばらんにできる環境とか「場」を、ZSKが担えれば業界団体として実に有益ではないだろうか。
――貴重なご意見やご提案ありがとうございました。たいへん参考になりました。








