☆ネツレン 80周年
☆ネツレン 80周年
☆ネツレン 80周年

 ネツレン(社長・大宮克己氏)はきょう15日、設立80周年を迎えた。「戦後の混乱期に誕生して以来、諸先輩方のたゆまぬ努力により、幾多の困難や転機を乗り越えながら、愚直にIH(誘導加熱)一筋の道を歩み続けてきた」と話す大宮社長に来し方と今後の展望を聞いた。(谷山 恵三)

――社内・社外へのメッセージから聞きたい。

 「社内に対しては、ネツレングループ従業員全員の努力の賜物であり、感謝しかない。しかし、80周年は通過点であり、グループメンバー、家族が誇れる企業を目指し、胸を張って100周年を迎えられるように今後も精進してほしい」

 「社外に対しては、ひとえにステークホルダーの皆さんのご支援の賜物であり、深く感謝申し上げる。これからも社会に貢献する企業グループを目指すとともに、環境負荷低減に有効な技術・製品を世の中に提供していく。今までと変わらないご指導、ご鞭撻を賜りたい」

――80年間に重要な時代は多々あったでしょうが、特筆すべき転機ではどんなことが。

 「最初の転機は1958年にPC鋼棒を市場投入したことだろう。設立以来、設備と熱処理受託を手掛けてきた当社が事業を広げる大きな転換点になった。64年の異形PC鋼棒『ウルボン』、81年の高強度ばね用鋼線『ITW』の市場投入、85年の高強度せん断補強筋の大臣認定取得も、当社が事業を広げる転機になった。昔、先輩に聞いた話では、60年代後半に『ウルボンも商品化した。次は自動車用のばね鋼線だ』と開発を始めたそうだ。新しい商品を市場投入しながら、さらに先を見て動く姿勢は当時も今も変わらない」

 「もう一つ大きな転機は96年の米国ホールディング会社設立を皮切りに、2003年に上海中煉線材、06年にネツレンアメリカとITWの事業会社を相次ぎ立ち上げた時だろう。1976年設立の高麗熱錬、87年設立の韓国熱錬はともに健在だが、両社以外の80、90年代のアジア、欧米進出では何度も失敗した。その反省も生かして軌道に乗せ、ITWがグローバルおよび国内で大きく広がる契機になり、その後の海外事業拡大の道も拓いた」

――現在の経営トップとして振り返って、どのように感じますか。

 「いつの時代もIH技術を基軸として、企業の成長に果敢に挑戦してきた。ニッチな技術を生かす絶え間ない努力がネツレングループを形作り、技術立社の企業文化を醸成してきたと感じる。海外展開に関しても規模の割に早くから動きだしており、先輩方は健全な危機感を持っていたし、先見の明があったと思う」

 「その上で現在に目を向けると、世の中の動きが激しくなり、特に時間軸に関しては相当短いスパンで次の展開を進めなければならなくなっている。自前主義による事業展開では限界があり、M&Aの活用も含めてスピードを追求し、アグレッシブにチャレンジしていく必要があると痛感している」

――現在および今後についても聞きたい。国内事業の強みと課題はどう認識していますか。

 「自動車、建築・土木、建設機械、工作機械、産業機械と幅広い業界に対する製品を持ち、長期にわたる研究・開発を通じて大学や学会とのつながりも強い。研究開発力や提案力は各業界から評価を頂いていると自負している。また製品、受託、設備とオールインワンで事業を展開し、社内設備はほぼ自前で準備できる能力もある。自己資本が厚く、安定した事業運営が可能なことも強みだ」

 「課題で特に重視しているのは人財の活性化だ。人財投資では今年はアグレッシブ・チャレンジ・ポスト制度(社内公募制度)の導入、管理職の役職定年延長も行った。2027年4月からは人事制度の改定も予定している」

――海外事業の強みと課題は。

 「世界の主要地域に拠点があり、各拠点とも現地従業員のマネージャーが育ち、経営の現地化が見え始めている。ITWは中国、北米、欧州、日本4拠点でサプライチェーンを構築し、相互補完も可能だ。熱処理受託は中国、インドネシア、メキシコ、設備は中国、韓国、インドネシア、北米に展開しており、幅広い地域で対応できる。また各拠点は事業部の壁が低くなっており、同一拠点でITW、熱処理、設備メンテナンスの複合事業化が可能になりつつある。次の拠点展開では、このビジネスモデルも念頭に置きたい」

 「課題は中国に偏重していることだ。連結売上高の4割が海外売上高だが、そのうち5割が中国に集中している。海外に派遣できる経営人材の育成や海外営業力の強化も必要だ」

――中期展望をどうみていますか。

 「21年にネツレンビジョン2030『進化と躍進』を策定し、環境負荷低減と企業価値向上に向けて、常にロードマップを点検しながら、こだわりを持って事業を展開している。策定時に予想もしなかった事業環境下にあるが、環境変化に右往左往せず、愚直に一本の道を進んでいくことで、環境に優しいネツレンの技術を世の中に広げていこうとしている」

 「刈谷工場の生産・物流を整流化する『REBORN刈谷』やROICを意識した設備集約、事業再編も進み始めている。全社横断の改革では『アグレッシブ・チャレンジ・ワン・ネツレン』を合言葉にしてきた。ワン・ネツレンの代表例が生産技術の一体化であり、昨年4月に製品技術本部に製品事業部の生産技術課を統合したのに続き、今年4月にIH事業部・加工部の生産技術課も統合した。東日本、中日本、西日本のそれぞれで生産技術を融合し、事業部の垣根を越えて現場力を上げていく。現場力さえしっかりしていれば、自動車分野であれ、建築・土木分野であれ、いざ動きが出てきた時にも即対応できる。生産技術のメンバーがグループ会社や海外拠点にも出るようになっていけば、グローバルにワン・ネツレンの現場力がさらに上がっていく」

 「従来製品の拡販を中心とした成長エンジンの育成、M&Aを含めた成長ドライバーの創生も着実に進めている。新技術・新商品の市場投入では、軸肥大加工、ダブルスターク、マイルド浸炭、ネツレンMB工法などは世界唯一の技術や製品であり、花開くまでに時間はかかるが、30年までに市場展開を進めていく」

――最後に長期展望も聞きたい。

 「例えば、国内では老朽インフラ整備が急務であり、そこにネツレングループとして深く関わっていく。高強度鋼材の供給だけでなく、人手不足解消や資材価格低減を見越した工法開発まで提案し、総合的に社会に貢献できる企業集団を目指していく。売上高の半分を占める自動車分野では、足回り・トランスミッション部品を得意にしているし、高強度・高精度・高耐久で軽量化された部品の需要はまだまだ続く。M&Aを活用した事業領域の拡張にも積極的に取り組み、IH技術を基軸とした総合熱処理事業、総合建築資材事業などへの展開を視野に入れている。まさにアグレッシブ・チャレンジだと考えている」