三和ホールディングスはきょう10日、創立70周年を迎えた。60周年からの10年を振り返ると、コロナ禍や地政学リスク、サプライチェーンの混乱など激動の時代だったが、同社の業績は好調に推移し、〝高機能開口部のグローバルリーダー〟への歩みを着実なものとしている。高山靖司社長に話を聞いた。(伊藤 健)
――創立70周年を迎えられました。
「まずはじめに、これまで当社グループと共に歩んでいただいたお取引先さま、鉄鋼メーカーをはじめとするサプライヤーの皆さま、協力会社、施工技術者、従業員、そして株主ら全てのステークホルダーに心より感謝申し上げたい」
「この10年を振り返ると、グループ全体の連結売上高は2015年度対比で約1・8倍(24年度実績6624億円)、営業利益は約3倍(同805億円)へと大きく伸長した。国内事業の確実な成長に加え、劇的に収益を改善した米州事業(ODC)が全体を力強く押し上げ、現在では海外事業の売上比率が50%を超えるようになった。また長年の悲願だった営業利益率2桁も達成した」
――好調をけん引した米州について聞かせてください。
「1996年に米国のODCの買収以降、先代の悲願は『売上高10億ドル(当時のレートで約1千億円)、営業利益100億円(利益率10%)』だった。現在では、売上高で目標の1・6倍、利益で2・7倍と、目標を上回る規模にまで成長した」
「要因は多岐にわたるが、商品力や納期、ディストリビューターへの顧客サービスの強化とともに、ERP導入や工場の統廃合、自動化設備導入などのコスト削減を両立し、適切な価格改定(値上げ)を浸透できた点が大きい」
「特にターニングポイントとなったのは、リーマンショック直後の2009年に実施したウェインダルトン社の買収。同社は住宅市場に強みを持っており、非住宅市場に強みを持つODCと一緒になることで、双方を補完し合える体制が整った。商品ラインアップや販売チャネルが拡充され、大きく成長する基盤が完成した。国内事業も厳しい時期であった当時、この英断を下した当時の経営陣の先見の明に感謝したい」
――欧州事業(ノボフェルム)の現状とこれまでの歩みについては。
「欧州は14年にオランダのアルファ社を買収して以降、数多くのM&Aを実施し『ノボフェルム3・0運動』などを通じて緩やかに成長を遂げてきた。欧州では産業用ビジネス(産業用ドアやヒンジドア)に軸足を固めている。アルファ社はコスト競争力と品質が高い産業用ドアメーカーであり、強化するため仏・英でも関連会社を買収した」
「一方、住宅向けのガレージドア事業は欧州の住宅市場低迷の影響で厳しい環境を余儀なくされているが、幸いにも当社は住宅市場にはあまり拡大投資をしてこなかった。コロナ以降は足踏み状態が続いているが、長い目で見ると、市場環境に左右されにくい産業向けビジネスを確立したことが一つの転機となるだろう。また、産業用ビジネスはメンテナンスと一体であり、その強化も進めていく。今後は市場回復に合わせて伸ばしていきたい」
――今後のポテンシャルが大きいアジア事業は。
「アジア事業は赤字から脱却し、ここ3年ほどは黒字を維持している。19年から連結対象となったが、売上規模や収益面においてはまだ課題がある。その中で21年にアジアでは初となる香港・AUB社のM&Aを実施した。アジアはローカル企業との競争が激しいが、AUB社も買収以降、継続して収益に貢献し、プレゼンスを拡大している」
「アジアは国によって市場や商習慣、文化が異なる。06年の中国・宝鋼集団との合弁『上海宝産三和門業』設立を転機に長年中国に注力し、中国とベトナムではローカル顧客向けの販売強化や商品開発へのシフトを進めてきた。加えて、ここ数年はアセアン地域への展開比率も高まっており、事業領域を着実に拡大している。国ごとのニーズに合わせた〝面〟での展開を進めていきたい」
――国内事業では、高付加価値商品や防災・環境対応が成長の鍵となっている。
「国内事業は祖業である三和シヤッター工業を中心に、自然災害や気候変動を見据えて、商品を〝適応〟と〝緩和〟に整理して拡販を進めている。〝適応商品〟としては、約10年前に業界で初めて防水シャッター『ウォーターガード』をいち早く投入した。その後も強風に対応する『耐風ガード』シリーズのラインアップを完備し、災害から人々の生活や財産を守るための製品開発を先行して進めてきた」
「一方、〝緩和商品〟も近年は力を入れている。高断熱仕様の『Re―carbo』シリーズの展開は今のニーズに合致している。また日本製鉄のGXスチールを採用した『YAGドア green flag』は製造過程からのCO2排出量(スコープ3)削減に貢献する。環境配慮型商品は厚みが増してきた」
「このほかIoT化、スマート商品も注力している。住宅だけでなく、主戦場である非住宅分野に向けたIoT対応が今後の主軸となる。需要家にとって直接的なメリットを提供できる方向性を目指していきたい」
――シャッターやドアに次ぐ間仕切事業、そして好調なメンテナンス事業については。
「間仕切事業は三和システムウォールをグループ化したことで順調に成長しており、市場シェアも10%程度まで伸びてきた。またメンテナンス部門は収益性が高く、業績に大きく貢献しており、国内売上高の約20%に達しようとしている。16年の防火設備の定期検査法制化を契機として、メンテナンス事業の重要性が年々高まっている。法制化当初の需要が一巡した現在も成長が続いているのは、国内の都市部には建築から30~40年が経過した大型ビルが多数存在し、リニューアル需要が出現していることが背景にある。サービス人員や検査員の採用・育成、専用営業所の開設など、体制強化の成果がしっかりと表れている」
――サステナビリティ経営や人的資本の強化といったテーマについては。
「環境配慮や省エネといった考え方は、当社にとっては従来から根付いていた発想だ。事業を通じた社会貢献に加えて、環境面では30年のCO2排出量削減目標(19年度比30%削減)を掲げている。国内外の工場における太陽光パネル設置などの脱炭素化も計画通り進ちょくしている。こうした姿勢が評価され、FTSEやMSCIのインデックス組み入れ、CDPのAリスト入りなど外部評価も向上した」
「また企業経営において一番大切なのは『人』であるという方針も、創業以来変わらない考え方だ。労働人口が減少する建設業界において、当社は早い段階から積極的な採用活動を展開し、中核事業会社の三和シヤッター工業の従業員数は10年前の3200人から現在は4800人へ増加し、平均年齢も約5歳若返った」
「25年からのエンゲージメントサーベイ実施や、70周年事業の一環として、従業員への株式付与など、やりがいと経営目線を持って働ける基盤づくりを進めている。このほか女性やシニア社員たちが活躍できる多様な働き方の推進、また中途の通年採用や適正な人事評価制度の運用などを通じ、『働きやすい職場づくり』を心掛けている」
――最後に「Sanwa Global Vision 2030」の実現、そして次なる10年に向けた展望をお聞かせください。
「引き続き、愚直に事業に取り組んでいくことに尽きる。イラン情勢や米国の関税問題、中国の景気減速、そして日本の労働人口減少や建設需要の停滞など、経営環境は常に変化し、世界情勢や経済環境の先行きを完全に予測することは不可能だ。だからこそ、目の前の変化にいち早く気付き、当社が基本軸とする『PDCAサイクル』をより早く、スピーディーに回して、最適にアジャストしていく経営が求められている」
「AIやITなどの技術革新によって世の中がどれほど便利で豊かになろうとも、人々の生活にとって『安全』『安心』のニーズがなくなることはない。創業以来受け継がれてきた『安全・安心・快適』を追求する姿勢は、当社グループの揺るぎない強みだ」
「70周年は次なる成長への通過点。今後も『高機能開口部のグローバルリーダー』を目指し、『安心・安全・快適』を追求する姿勢を変えることなく、着実に歩みを進め、ステークホルダーの皆さまとともに力強く成長し続ける企業でありたい」







