総合商社系の鉄鋼建材専門商社「伊藤忠丸紅住商テクノスチール」(本社・東京都千代田区)が2026年1月1日、発足10周年を迎えた。伊藤忠商事、丸紅、住友商事の総合商社3社を源流に、伊藤忠丸紅鉄鋼が66・7%、住友商事グローバルメタルズなど住友商事グループが33・3%を出資する一大流通だ。国内の人口減少に伴う建設・建材市場の縮小傾向を見据え、伊藤忠丸紅テクノスチールと住商鉄鋼販売の旧2社が統合した同社。厚みを増した人材や幅広い商材・工事・サービス、豊富な情報力を武器に営業力を強めた今の姿を探る。(新谷晃成、斎藤雄輝)
――統合・発足10周年に至った今の心境を伺いたい。
「まずは無事に10周年を迎えられたことをお客さまはじめ、株主会社の伊藤忠丸紅鉄鋼と住友商事グループ、そして社員の皆さんに感謝申し上げたい。さらに、日本の人口減少に伴い国内建設市場、ひいては建設鋼材の需要が縮小するのを見据えて、この統合を決断し大きくかじを切られた諸先輩に敬意を表したい」
――経営数値で統合効果をどうみているか。
「合併初年度の2016年度は売上高が3095億円、純利益は16億円だった。直近の24年度は売上高が4712億円、純利益は38億円と拡大した。25年度もほぼ前年度並みで推移しており、十分に効果を発揮している。一方で社員数は約400人と現在とほぼ変わらず、これは稼ぐ力が強まった結果だ」
――押し上げ要因は。
「株主に当たる伊藤忠商事、丸紅、住友商事という三つの総合商社が持つ情報を活用できたのが強みと言える。さらに仕入れ先や販路、課題解決などの手数が増え、人材に厚みが増した。こうした点が相乗効果の源泉となっている」
――足元の鉄鋼建材需要が低迷している。
「ここ2年で大きく変わったのがゼネコンの施工能力だ。国が推進する働き方改革により、建設・物流業界では残業時間が減り、多くの工事現場が土曜も閉所するようになった。労働力に換算すると24年度以降は1カ月当たり20%減少し、工期遅延や着工延期、計画見直しなどが相次いだ。これに比例して鋼材需要も減っている。ただ25年度上期で施工能力が固まり、当面は横ばいで推移するだろう。潜在需要は高いままなので、今後は省力化・省人化に寄与する工法や商材が普及すれば上向くのではないか。当社で言えば工場加工で現場施工を減らせるファブデッキやKHスラブといった独自の床版商品の引き合いが好調だ。先人の種まきがまさに日の目を見た好例と自負している」
――26年度の営業戦略は。
「25年度中にファブデッキとKHスラブの供給体制が強化できた。ゼネコンの施工能力を補えるこうした商品や技術・サービスの提供を強化し、収益のプラスアルファを狙っていきたい。さらに株主情報を機軸にしつつ、互恵関係を通じてより多くの案件を取り込んでいきたい」
――課題は何か。
「やはり商品を含めた、ゼネコンに向けたサービス機能の強化だ。困り事といったニーズを把握し解決手段を講じるには、鉄骨・鉄筋・土木の各工事に通じた人材の確保が不可欠となる。特色ある技術を持つ企業のM&A(企業の合併・買収)は大きな選択肢であり、経験者採用の拡大と社員教育の充実化も並行して取り組むべきだろう。工事現場のことが分かる人材に育てていくことで、顧客に求められる商品やサービスをしっかり提供していく。拠点については現状において全国展開ができているので、当面増やす予定はない」
――株主会社や子会社など、グループ企業との協業はどうか。
「情報共有を中心にこれまでもしっかりやってきた。独立した各社が役割に合わせ、市場のニーズに沿って対応していくことが重要だ」
「子会社では、24年に伊藤忠丸紅鉄鋼から移管された太平産業は軽仮設機材販売のほか施工管理にも強く、当社の鉄骨工事の対応力が向上している。柱として育てたい。また昨年12月には東鋼産業を吸収合併し、東北地区の営業機能を強化した。厚板溶断の北陸鉄鋼センターは共同出資する川田工業との関係性を、平鍛造も当社の鍛造加工品部が窓口となる連携をそれぞれ深めたい。35%出資するトーセンは鉄筋の取引をメインにするほか、その子会社の三輪鉄建も胴縁など鉄骨二次部材加工で存在感を発揮している。唯一の海外事業であるSMCサミットも、成長が続くベトナム市場で何が協業できるか検討していきたい」
――従業員の就業環境も大きく変化した。
「直近では本社や東北支社を改修し、部署の垣根を越えて社員同士が気軽に会話ができるミーティングスペースの新設など、配置も含めて働きやすい環境整備を推進した。ソフト面でも管理職を対象に、社員からの意見を基に立案させた『イクボス研修』を今年度から実施した。男女問わずに育児休業を取得する部下への理解を深めさせた」
ゼネコンの施工力補完、収益増狙う/「強くて良い会社」を志向
――人事政策は。
「世代間が平準化されるよう、景気に左右されない安定的な人材採用を心掛けている。新人には当社の業務を理解してもらい、工事現場にも積極的に行かせている。また建設会社のプロと対等に話せるよう、国家資格の施工管理技士の取得も受験費や手当の支給で推奨している。若い人には、何とかなると前向きに構える『明るさ』、落ち着いて行動できる『柔軟性』、当事者間に入って課題を調整する『耐性』を期待したい」
――脱炭素社会の実現に向けた対策は。
「まずは伊藤忠丸紅鉄鋼が提供する『MIeCO2(ミエコ)』などを活用し、建材や工事で発生する二酸化炭素(CO2)排出量の見える化に目を向けたい。問題を把握することで判断材料を得て、解体現場の鉄スクラップを納入した電炉メーカーから新たな物件の鋼材を仕入れるサーキュラーエコノミー(循環経済)、グリーン鋼材を提案するなどして、取引先と一緒にCO2削減に取り組んでいく」
――デジタル化やAI(人工知能)の活用などでDX(デジタルトランスフォーメーション)にも力を入れる。
「社内業務ではミルシート(鋼材検査証明書)を自動で仕分けし電子化する『ミライソーター』を昨年導入し、毎日数時間をかけていた作業を約20分に短縮した。今後はコンピューター入力や演算を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、設計から鉄骨などの加工、現場施工まで一貫して図面情報などを3次元データで共有できるBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)も、建設現場の声を聞きながら捕捉していきたい」
――5年、10年先を見据えた展望を。
「社員には『強くて良い会社にしよう』と常々言っている。強さは単にもうけるだけでなく、社会変化にも対応して安定して稼げるという意味がある。これからの建材市場に必要とされる機能を提供し、社員や役員が働きがいを持って楽しく勤められる良い会社を目指したい」



