

西日本金網協会はきょう6日、設立25周年の節目を迎える。協会員企業に向けた有益な情報の発信や需要開拓、広報活動を主な業務とし「織金網」「亀甲金網」「クリンプ金網」「ひし形・じゃかご」の4部会で構成する。現在、正会員は44社、賛助会員は15社。金網の歴史は長く、種類もさまざま。落石防護網や河川向けじゃかごといった災害防除向けから半導体製造装置に内蔵される極細線金網まで、産業用途の裾野は広い。国内最大の金網業界団体の歩みと展望を、藤田靖三理事長に聞いた。(山浦 なつき)
――まずは25周年を迎えて。
「関係者の皆さまに支えられ、おかげさまで節目を迎えることができた。人生に例えるならば、この25年は幼少期・思春期・青春期。ようやく働き盛りの『一人前』となった。厳しい環境下ではあるが、先輩方・同輩・後輩とともに、引き続き金網業界を盛り上げていきたい」
――足元のマーケットは。
「もともと向け先の広い業界ではあるが、基幹は建設・土木と自動車関連。この2大産業が、恐らく現役世代にとって初めてともいえるレベルの需要減に直面している。金網の周辺需要に直結する亜鉛生産やセメントの国内需要は59年ぶりの低水準を迎え、米国の関税政策は国内自動車産業の先行きに影を落としている。今年度は、前年度並みを維持できれば大健闘だろう」
「需要がシュリンクする中で、周辺コストは高騰し続けている。原価意識を適正に反映した価格設定の周知が業界全体の課題。かつては業界の多くが『薄利多売で収益拡大』という考え方だったが、これは市場が拡大しているタイミングでの理論。苦心して積み上げた新価格で、この先の厳しい市況と対峙し、『持続可能』な企業経営を続けるためにも、各社今が踏ん張りどころだ」
――防災意識の向上が期待される。
「2026年に新設される防災庁における予算の振り分けを注視している。金網は護岸やフェンスなど、事前防災に関連するアイテム。希望的観測ではあるが、防災関連の公共投資や、自動車関連等の安全向上に向けた民間投資による引き合い増に期待したい」
――減ることはあっても、決してなくならない製品とされる。
「金網は、人々の命や暮らしを守る重要な使命を持った産業資材だ。皮肉なことに今では、需要減による市場縮小と人手不足による生産能力の低下で、結果として製造体制を維持できている」
「公称供給能力と実質生産量の乖離はいびつだが、各企業が余力を分け合い、仕事を助け合う『横請け』という昔からのスタイルは金網業界ならではのもので、現在も続いている。信頼関係をさらに深め、さまざまな課題に対応していく」
――協会の「存在価値」について、改めて考えを伺いたい。
「『集い』と『発信』を重要視している。私はコロナ禍で理事長に就任したため、一期目のほぼ2年間は活動の基本が行えず、葛藤の連続だった。内部に対しては役員会を中心にオンラインで意思疎通の頻度を高め、また外部向けにはメディアに対して、オファーの受け入れはもちろん、切り口を見いだせたら、新聞・雑誌・TV・講演会と、金網や当協会の話題発信にも全力投球したつもりだ」
「手応えは十分あった。例えば会員企業と一緒に朝ドラとのコラボ企画でNHKのテレビ番組に出演した際は、『西日本金網協会』のテロップが全国に紹介され存在価値を大きく発信できた。こうした業界振興活動が評価され、大阪府知事表彰を頂いた。こんなタイミング(コロナ禍)だからこそ、なんでも取り組むぞ、といった想いが形になったことは非常にうれしかった」
――コロナ禍を乗り越え、ようやく活動が正常化した。
「顔を合わせる機会が復活した。ひし形・じゃかご部会は延期となっていた沖縄遠征を実施し、部会員・賛助会員の絆を深めた。また、4部会中最大の織網部会は、工業用パーツ向けだけでなく、その繊細さをあえて魅せるアイテムとして、大きな展示会などで意匠性の高さをPR。新たな需要を開拓している。亀甲部会とクリンプ部会では、3~5歳の小さな子どもたちに、いかに金網を身近に感じてもらうかを議論した。金網業界の未来展望に不可欠なテーマだと捉えている」
――未来世代に向けた金網の認知度向上にも取り組んでいる。
「前述の部会活動が原動力となって、『かなあみって、なあに?』をタイトルに、小さな子供向けの絵本を作成した。幼児向けの詩文(ポエム)を考え、絵本大賞に応募。悔しいことに賞は取れなかったが、『かなあみ』という産業素材をテーマとした絵本の前例がないことから出版社の目に留まり、オファーがきた。今年の秋には書店に並ぶ予定で、図書館や保育園、幼稚園など、多くの子供たちに、また関連企業の皆さまのご家族に手に取っていただきたい」
「来年、我々の上部団体である日本金網団体連合会の50周年式典が11(十一)月11(十一)日に、関西で開催される。四つの辺で成り立つ織網・ひし形・クリンプ、また六つの辺で成り立つ亀甲網が、1年に一度だけ集う日で金網業界にとってまさに吉日だ。この日に向けて、さらなる業界機運の醸成を目指し、金網を思う気持ちから生まれるパワー(想網力)を高め、同業者仲間(網友)とともにこれからも歩んでいきたい」