水上にステージが浮かぶ
水上にステージが浮かぶ
岸壁から倉庫へコイルを運ぶ様子
岸壁から倉庫へコイルを運ぶ様子
水上にステージが浮かぶ 岸壁から倉庫へコイルを運ぶ様子

 淀川製鋼所グループでコイルセンター(CC)の高田鋼材工業(本社・大阪市大正区、社長・松村英之氏)は、本業のスリット加工のほかに倉庫・港湾運送業も手掛けている。岸壁埠頭には、国内では数少ない水上に設置されたステージ上のクローラークレーン(通称・水上ステージ型クレーン)が存在する。

 人工港湾である大正内港内に水上ステージ型クレーンは設置されている。船で運ばれたコイルを吊り上げ、専用の滑車に荷降ろしして目の前の倉庫に移動する際に使用される。「荷役作業で使用する水上ステージ型クレーンを保有している企業はほとんどない。珍しい設備のため、このクレーンを見に来る人もいる」(松村社長)と話す。現在の荷役作業用クレーンは水上ではなく、設置やメンテナンス費用などコスト面を配慮して陸上に設置するタイプがほとんど。水上タイプは行政への申請なども現在では非常に難しく、新規で設置することは「滅多になく、更新する際に水上式から陸上式に変更するのがほとんど」とのこと。

 同社が倉庫・沿岸荷役業に進出したのは1961年。半世紀以上にわたり、水上ステージ型クレーンが活躍している。保守・点検は資格を有する潜水士が水中に潜り、作業を行う。「水上ステージ型クレーンはオーナー時代から存在する。珍しいのでこのまま残している。珍宝のようなもの」と笑顔で語る。

 港湾運送については淀川製鋼所の呉工場や市川工場で製造したコイルを大阪工場に運送するためなどに使用される。岸壁埠頭は積載量1800トンクラスの船舶まで接岸可能で、船からの揚陸は最大25トン、倉庫では最大19・7トンのコイルまで受け入れ・保管できる。

 大正内港は台風シーズンに船舶の避難場所として利用されるほどで、鉄には禁物の潮風の影響も少なく、コイルを安全に港湾運送できるのが特徴だ。「当社の水上ステージ型クレーンは頑丈で安全。自然災害にも強い場所でこれからも当社を支える事業として継続させていきたい」という。(綾部 翔悟)