創立60周年の節目に合わせて建立した銅像。台座には「一代記」も
創立60周年の節目に合わせて建立した銅像。台座には「一代記」も
四半世紀を過ぎても現役として稼働し続ける自動バンドソー
四半世紀を過ぎても現役として稼働し続ける自動バンドソー
創立60周年の節目に合わせて建立した銅像。台座には「一代記」も 四半世紀を過ぎても現役として稼働し続ける自動バンドソー

 栃木県で各種鋼材やステンレス、非鉄金属の販売・加工を手掛ける植木鋼材(宇都宮市川田町、社長・植木揚子氏)は、1962年7月の会社設立から数えて今年が60年。この間に積み重ねてきた会社の歴史・沿革は、すなわち、今も現役として社業に従事する創立者の植木政行会長(86)が歩んだ道のりそのものである。

 独立・起業して60周年の節目を迎えるに当たり「創立者として何か自分の足跡を後世に残したい」と思案し、自身の銅像を建立した。

 台座には「一代記」があり、その一節には、宇都宮の地に誕生してから戦災を経て地元の商業高校を卒業後、東京・日本橋の鉄鋼問屋で鉄屋修業したのち、弱冠26歳で会社を興すまでを記載してある。そして昭和、平成の激動の時代を、鉄の商売ひと筋に「妻(悦子さん)との二人三脚で幾多の困難を乗り越えながら60年もの間、生き抜いてこられたのは皆さまの援助と協力があったからこそ」と謝意を綴った。創立者ならではの、万感の想いが伝わってくる。

 銅像は、会社に入ってすぐの、事務所前の誰もがパッと目につく場所に置いた。玄関先で常に社員を見守り、また、真っ先に訪問客を出迎えている。銅像の前で社員は朝礼や朝の体操を行う。

 「この先、わが社が70年、80年、100年…と歩みを続けても『鉄のデパート』として『植木に頼めば何でもそろう、どんなことにも応える』という利便性や顧客重視の精神を忘れずに日々の仕事に感謝し、地域社会への貢献に努めていきたい」と言う植木社長。

 銅像は「両親から受け継いだ商売の根っこを片時も忘れないための原点回帰であり、文字どおり『社宝』です」。

 実は現場にもお宝がある。1996年に製造され、今も現役として活躍する大東精機製の自動バンドソーだ。

 同社には毎朝15分間の掃除習慣がある。「心を磨く活動」と位置づけ、全社員が持ち場をきれいに清掃する。設備に対しても日々の働きに感謝し、隅々まで手入れする。人も機械も、心を込めて接すれば必ずそれに報いてくれるから、このバンドソーも故障知らずだ。

 今でこそ同社は最新鋭のファイバーレーザやツイスター切断機、折り曲げ加工機とさまざまな設備をそろえるが、このバンドソーは同社が加工に本腰を入れるようになったルーツであり、地味ながら同社にとっては存在感たっぷりの「社宝」。これからも多様化する顧客ニーズにしっかりと応えていくための大切な加工ツールである。(太田 一郎)