神戸製鋼所はサステナビリティ経営に資する、企業価値向上に必要なさまざまな変革を「KOBELCO―X」と定義する。このうち、「EX(人材戦略・従業員体験向上)」では▽組織の多様性を高める▽一人ひとりの成長・挑戦を促す▽活躍できる環境を整備する――の三つのアプローチを掲げており、D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)推進も重点取り組みの一つと位置付けている。
D&I推進では、現行中期経営計画(2024~26年度)で、新卒採用における女性比率、女性管理職数、障がい者雇用率などの指標・目標を定め、実現に向けた具体策を打ち出した。
女性活躍推進では「26年度に女性管理職100人以上」を掲げる。女性管理職は10年前の15年度には29人にすぎなかったが、仕事と生活の両立支援制度の整備・拡充をはじめとする就業継続支援策や管理監督職を中心とするアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)に関する研修実施などの各種取り組みを進め、着実に増加。23年度には74人まで増えた。今後も増加の見込みで、各種取り組みを継続していく方針だ。
また操業現場での女性技能職増加に対応して、厚生施設などの整備や女性同士の交流会なども実施している。
女性活躍推進以外にも、多様性を増やす・理解することを目的に、合理的配慮への理解を深めるユニバーサルマナー検定の受講促進や、LGBTに関する研修実施、啓発活動としてのイベント参加などに取り組んでいる。
従来から取り組んできた働き方変革も進めており、これに関する指標・目標も掲げる。年次有給休暇取得日数や総実労働時間などだ。このうち有給休暇取得日数は年間15日が目標。取り組みを開始した15年度は11・8日だったが、各部署で年間年休計画の作成などを進めた結果、17年度に15・5日と目標をクリア。23年度も18日と高い水準を維持している。ほかにも病気・育児・介護などで利用できる休暇を新設するなど、仕事と生活の両立支援施策も進めている。
また、現行中期経営計画では「人への投資」も積極的に進めている。
基本賃金では、24年度に3万円、25年度に1万5千円のベアを実施。いずれも労働組合の要求に満額で応えた。併せて休日増や各種手当の増額も実施。同時期の同業他社の処遇と比べても、より手厚い処遇を実施した。
中計期間中に職場環境改善に450億円程度を投入する計画。初年度の24年度ですでに150億円の投資を意思決定。寮・社宅、厚生施設、事務所オフィスの整備などに充てる予定だ。
人材不足への対応では約150億円の投資を予定。この一環として、加古川製鉄所(兵庫県加古川市)スラブヤードのクレーン自動化などを実施した。現場作業の省力化などを通じ生産性を高めることで、人的資本を有効活用する狙いだ。
サステナビリティ推進委員長を務める永良哉副社長は、「世界各国に拠点を持つ当社は、働く社員も多様性に富む。社員一人ひとりの人格・個性・多様性を互いに尊重し、それぞれが最大限に能力を発揮して、いきいきと働ける職場環境を実現し、社会課題の解決や新たな価値創造に取り組んでいきたい」と話す。