金属サイディングメーカーで国内トップシェアのアイジー工業が今年創立55周年を迎え、本日(3日)都内、9月2日に山形で記念式典を開催する。唯一無二の商品開発にこだわり、高い技術力と妥協しないものづくり精神で常に時代を先取り、成長をし続けるアイジー工業。森安弘社長に節目を迎えた感想や今後の展望を伺った。
――創立55周年を迎えた感想を。
「当社創業は1970年。偶然私と同い年、創立日も誕生日と1週間違いで非常に縁を感じている。創業者の故石川堯氏が55年前、鋼板と断熱材を組み合わせる独自のアイディアから金属サイディングが生まれた。「山形の寒い冬でも健康で快適に暮らせる家を」との想いから、苦労を重ねながら様々な商品を次々に開発、実用化していった。私は2002年にアイジー工業が住友商事と資本提携をする時、住友商事側の推進担当としてその実現に注力していた。実現後は石川堯氏に代わり社長に就任した金田直治氏の補佐役として営業課長を拝命し、山形県東根市で5年間過ごした。その後、住友商事に戻り海外駐在もあったが、いつか再び戻りたいとの念願が叶い、20年5月にアイジー工業に再出向となり23年6月に社長を拝命した。今回の55周年は、コロナ禍で50周年式典が開催できず、お伝えできなかった感謝の気持ち、100年企業を目指す当社の姿勢を見届けていただき、一緒に成長したいとのメッセージを発信する機会と考えた。建材業界は足元厳しいが、だからこそ前向きに明るく元気に「55(ゴーゴー)」と勢いを増したいとの想いもあった」
――御社がこれまで培ってきた強みは。
「新しい商品や技術を独自で作り上げ、世の中に送り出すのが55年前から変わらぬ我々のDNAであり、ものづくり精神が脈々と続いている。さらに言えば「時代を先取りする新しい商品を今後も出し続けてくれそう」という皆様の期待感がブランド力につながり、部署は違っていても社員一人一人がそれを共有し、モチベーションに変えている。また山形が創業の地だったことも強みと言えるだろう。山形の冬を克服することが創業者のアイディアの基本にあるのはもちろんだが、それを形にするのは優秀有望な人材だ。当社社員は山形出身者で7割を占め、愚直でまっすぐに仕事に打ち込む県民性で満ちており、それが商品開発や品質に対して妥協しない企業風土につながったと感じている」
――現在、注力する取り組みは。
「当社には住宅向け外壁材『アイジーサイディング』、住宅向け屋根材『アイジールーフ』、非住宅向け外壁用サンドイッチパネル『アイジーヴァンド』の3本柱がある。金属サイディングは当社が業界トップシェアだが、新築住宅全体では窯業系のシェアは約80%を占める。少子高齢化・人口減少で新築着工数が頭打ちとなる中、これから着工する住宅は「ありきたりではなく、もっと個性的」になると感じる。それを踏まえ金属ならではのデザイン性や美しさ、強さや機能性を提案して差別化を図ることを進めれば、窯業系の一部が金属に置き換わる伸びしろは十分にある」
「ルーフについては、これまでの住宅建設において膨大に使用されてきた平型化粧スレート屋根材のストックがメンテナンス時期を迎えている。これに対し、断熱材と超高耐久ガルバ鋼板を組み合わせた当社材料を使用し、平型化粧スレート屋根材を撤去せずにリフォームするカバー工法の需要が底堅く推移している。屋根の長寿命化にとどまらず、夏の猛暑を抑えて住環境性能を高める効果が確認されている。平型化粧スレートの既存屋根ストックは数億平方メートル、今も毎年1千万平方メートル規模が増加しており、これらがいずれメンテナンスに回ることも含めて将来性ある分野と期待している。今年4月には需要地に近いエリアでの供給を目指し、茨城県下妻工場での生産を開始した。予定するさらなる設備増強も着実に進め、リフォーム需要に対応していきたい」
「アイジーヴァンドは、物流倉庫をはじめ食品や医薬品などの生産工場や半導体工場、最近ではデータセンターなどに使用され、高い施工効率性や省エネ性、さらには国内への製造拠点回帰などで採用実績を増やしている。足元は鉄骨造新築着工の低迷で出荷量こそ落ちているが、長い目で見ると建設業の人手不足などを背景に需要は底堅い。そのため4年前に水戸工場で断熱商品である断熱ヴァンドNZの生産ラインを新設したほか、今月には耐火ヴァンドRZの生産ラインをリニューアルするなど、先に手を打っている。これらの増強投資により生産能力は1・5倍となり、拡販を進めていく」
――今後の課題、目指す方向性は。
「3本の柱はいずれも伸びしろがあり、チャンスを秘めている。だが、さらに創業者のDNAに立ち返り、55年を通過点として現状に甘んじることなく、100年企業を目指すためには新しい第4、5の柱を見つけることが一番の課題だ。種蒔きを行い、当社ならではの分野を独自で作り上げ、パイオニアとしてその分野を広げなければならない。すでにいくつか構想は持っており、ここ数年で発表することになるだろう」
「昨日できなかったことを今日できるように、今日なかったものを明日には作り上げていくような「変化・進化・成長」し続ける会社であり続けたい。その意味から55周年のスローガンを「アイジーは、止まらない。」とした。今年入社した社員は100周年を現役で見届けられる人材となるだろう。彼ら・彼女らが100周年の主役となり、55周年以上によい状況で100周年を迎えられるよう、我々はその礎づくりに全力で頑張り続けたい」