

三井物産と、鉄骨エンジニアリングを軸に建築BIM全般を請け負う「BIMTEC(ビムテク)」が共同で開発・運営する、鉄骨にフォーカスしたBIMの総合情報サイト「steelnavi(スチールナビ)」は、サービスの提供を開始して間もなく1年が経つ。建設業界の生産性向上を目指す中、利用する対象に応じて「鋼材明細作成システム」(構造設計者向け)や「BIMモデルチェックサービス」(一般図・製作図エンジニア向け)、「鉄急便」(鋼材マッチングシステム、鉄骨建方現場・流通加工向け)などをラインアップ。サプライチェーンを構成する各階層の業務効率化に道筋を付けようとしている。
運用が先行する鋼材マッチングシステム「鉄急便」では、サプライヤーとバイヤーの両者で利活用に向けた動きが進む。鋼板加工販売業の和東産業(北九州市八幡西区)もその1社で、TMCP鋼をはじめ複数の品種の登録に着手している。
同社のTMCP鋼は、納入を予定していた物件で変更が生じ、本社の工場で保管していたもの。今後の活用については白紙の状態にあり、こうした在庫をめぐる対応はかねてから課題の一つだった。
市中に流通する数量が限られる仕様であるほど、出荷先は見つかりにくく、逆に急な手当ても難しい。「どうしても『この1枚がほしい』という場合もある」(資材部の真鍋健治部長)。鉄急便の存在を知り、これまでの経験から「お困りの方の目に触れ、お役に立てれば」との思いに至った。
加工で発生する端材の中にも、歩留まりなどをクリアすれば、十分に必要なスペックを満たすケースが少なくない。「現場に眠っている在庫が日の目を見る」ことで商材として付加価値の醸成につながり、鉄急便ならではの「希少サイズや短納期、緊急の鋼材手配に対応する」とのコンセプトにも合致する。他品種についても「少しでも使っていただけそうな余地があれば検討したい」考えだ。
三井物産とメタルワンの合弁会社である「エムエム建材」の完全子会社で、条鋼建材の在庫・加工を展開するエムエム建材販売(本社・東京都港区)では、東日本に展開する12の鋼材物流拠点「鉄鋼センター」にラインアップする商品から鉄急便の掲載候補を東京支店(同)で精査する。本日までに約1800点を登録済みであるが、エムエム建材販売が取り扱う品種やサイズは多岐にわたっており、今後も掲載商品を増やしていく方針である。運用に際しては「定量的な規模感が閲覧者にインパクトを与え、当社に関心を持っていただくきっかけになることが期待される」とともに、取引先の経営トップからは「仕入れと販売の双方で選択肢が増え、新たなネットワークの構築に繋がることを期待したい」との前向きな受け止めが聞かれる。
鋼製型枠による先行埋め戻し工法を展開する高伸建設(東京都世田谷区)は、既存の提携工場に続いて型枠の製作を担ってくれる新たなパートナーを探していたところ、鉄急便と接点をもった。
同社では、フラットタイプとキーストンタイプの2種類を取り扱い、ともに従来の工法に比べ大幅な工期の短縮や人工数の削減などを実現。昨今の市場ニーズに最適な機能を発揮する一方で、建物の規模や形状に準じてオーダーメードでの供給が不可欠な製品の特性を持つ。
かかる前提を踏まえ、同社が希望する加工依頼を鉄急便に掲載するや「早い段階で数社からレスポンスを頂いた」(飛山孝之取締役技術部部長)。いずれも取引の実績がなく「こうしてコンタクトを取れたのは大きな成果」と、デジタルプラットフォームならではの地の利を実感する。
同社では工事を受注する際、「鋼製型枠とは別な鋼材の加工案件に対応する機会も少なくない」といい、鉄急便の登録先が保有する設備によって「仕事をお願いできる候補が多いのは心強い」。マッチング機能を足掛かりにニーズとシーズが結び付き、互いの競争力を補完する糸口になり得る。登録者の数に比例してその確率は上がり、サイト自体の利便性も高まる。
鉄急便と並んでスチールナビを構成する「鋼材明細作成システム」や「BIMモデルチェックサービス」もまた、鉄骨のエンジニアリング力と多彩なBIMソフトウエアでユーザーが抱える課題の解決に向けた取り組みを加速させる。就業者数の減少と高齢化の波は迫るばかり。デジタル技術を起点に新たなビジネスの間口を広げていく。