総重量250キロ、来場者は直接触れることもできる
総重量250キロ、来場者は直接触れることもできる

 三菱マテリアル子会社の土肥マリン観光が運営する観光施設「土肥金山」(静岡県伊豆市)は、ギネスブックに登録された世界一の巨大金塊を常設展示している。総重量250キロ、時価にして約21億円(金価格8402円/グラムで算出)の価値がある金塊に直接触れることもできる。

 来場者に喜んでもらうため、ミレニアムイヤーの2000年に当時世界最大の200キロの金塊を一般公開したのがはじまりだ。だが、2004年に台湾で作られた220キロの金塊に世界一を更新されてしまう。そこで2005年6月に三菱マテリアルの直島製錬所(香川県)で、同社独自のノウハウや鋳造技術を駆使して250キロの巨大金塊を製作。翌月から一般公開を開始し、翌年に世界一の金塊としてギネス認定された。

 金塊のサイズは底面455×225ミリ、上面380×160ミリ、高さ170ミリ。純金250キロは金箔に伸ばすと畳7万枚以上、金線にすると地球18周分に相当するという。展示開始当時の時価は約4億円だったが、金価格の上昇で足元では約5倍の価値まで上がっている。

 鉱山としての土肥金山は、室町時代に採掘が始まったと伝えられ、「江戸時代」と「明治から昭和」の二期にわたって隆盛を誇った。江戸初期に金山奉行の大久保長安が新技術を導入し、産金量が飛躍的に増大。慶長大判小判に土肥金山の金が使われ、徳川家康の財政を支える重要な金山だった。巨大金塊に三菱ブランドを示す「スリーダイヤ」とともに、徳川幕府の「葵の御紋」が刻印されているゆえんだ。

 土肥金山は1965年の閉山までに金40トン、銀400トンを産出(推定)。閉山後に坑内の一部を整備し、1972年にテーマパークとして生まれ変わった。現在は資料館や観光坑道の見学、砂金採り体験も楽しむことができる。坑道内には黄金の鳥居が立つ「山神社」などがあり、金運パワースポットとしても人気だ。巨大金塊には普段はアクリルケースに開いた穴越しで触れることになるが、吉日「一粒万倍日」に合わせたイベント期間にはケースを外して展示することもある。訪れる来場者からは「本物ですか」との質問が多く、本物の純金だとわかって驚く人がほとんどだという。

 世界一の巨大金塊は、「価値が失われることがない」とも言われる金の輝きで来場者を魅了しながら、三菱マテリアルの一世紀以上にわたる金属製錬事業の歴史と技術のアピールにも一役買っている。(相楽 孝一)