高度経済成長期、人口急増と都市化への対応として大規模な住宅開発が進み、多数の宅地擁壁が造成された。当時造成された数多くの擁壁が今、耐用年数を迎えようとしている。また近年の気候変動の影響による長雨や集中豪雨が増え、大規模地震が発生する確率も高まっている。こうした状況下において壁体の一体性が低下している古い宅地擁壁は、その老朽化の進行とともに崩壊リスクが急速に高まり得ると言える。これまで、老朽化した擁壁は撤去し新たにコンクリート擁壁を造成する方法が一般的だったが、伝統的な景観や技法を損なう上、解体・再構築に伴う廃材の発生など、環境への負荷が大きいという課題があった。

 「バットレス型補強アンカー工法」は、既存の擁壁を最大限に活かしながら補強するサステナブルな工法だ。表面側から補強材を施工し、柱状構造体と結合させることで背面に〝見えない擁壁〟を形成し、土圧に抵抗させる。敷地境界を越えず、既存建物の基礎に干渉もしないため、環境負荷を抑えつつ安全性を向上させることを可能とした。本工法は『文化財石垣・石積擁壁補強技術協会』と岡部が共同で開発し、岡部はその事務局として普及活動を積極的に推進している。災害に強い擁壁づくりへの需要は年々増大し、市場も拡大している。「バットレス型補強アンカー工法」は、今後さらに需要の高まりが期待される工法だ。