イベント会場ではアルミ製弦楽器を用いたコンサートも開催された
イベント会場ではアルミ製弦楽器を用いたコンサートも開催された
新幹線の板金職人が製作したアルミ製弦楽器
新幹線の板金職人が製作したアルミ製弦楽器
イベント会場ではアルミ製弦楽器を用いたコンサートも開催された 新幹線の板金職人が製作したアルミ製弦楽器

 〝1月11日はアルミの日〟―。日本アルミニウム協会が昨年制定した「アルミの日」が先月、初めて記念日当日を迎えた。我々にとって身近な存在であるアルミを一般消費者に知ってもらうために開催したイベントには約1700人が訪れ、大変なにぎわいを見せた。「アルミの日」の制定をはじめ、一般消費者へのアルミの理解促進の状況やアルミの魅力、課題について、日本アルミニウム協会の石原美幸会長(UACJ会長)に聞いた。(遊佐 鉄平)

――「アルミの日」制定の経緯を。

 「アルミは飲料缶や自動車などさまざまな製品に使われており、その特性や具体的な用途は我々アルミ業界で働く者にとっては当たり前のことだが、一般の方にはまだまだ伝え切れていないと感じることが多い。こうした実情を踏まえ、一般消費者にアルミという素材が国内の産業や生活を支える重要な役割を果たしていることをより広く知ってもらう狙いで『アルミの日』の制定を決めた。1月11日は、1934年に旧昭和電工(現レゾナック)が長野県大町市において、国内で初めてボーキサイトを原料としたアルミナから電解製錬によるアルミの工業化を実現した日。この日を起源とするのが良いと判断した」

――今年1月11日には東京・台場で初のイベントを開催しました。振り返っていかがですか。

 「率直な感想として、初めの一歩としては大成功だったと感じている。記念イベントでは、アルミ製の楽器を使ったコンサートやワークショップなどを行ったが、11時~18時までの7時間という限られた時間の中で、想定を大きく上回る1700人の方々に来場いただいた。幅広い年齢層の方々が来場してくださっており、家族連れも多くお見掛けした。ワークショップは子供たちに大人気で、準備した材料が不足するほどだった。教育現場に携わる来場者からは環境学習の教材に関する相談を頂いたり、来場者向けアンケートで『アルミがどのように作られるのか知りたかった』『本物のボーキサイトの展示物があるとよかった』『リサイクルについて親子で学びたい』など、次につながる気付きをたくさん頂いた。我々が意図したところは実現できたと考えており、これからを担う環境意識の高い若い世代の方々が、さまざまな素材のある中でアルミを選び手に取ってくれることにつながればうれしい」

――今後の記念イベントの構想は。

 「今後も継続してイベントを開催していきたい。開催場所は東京に限らず大阪など東京以外の都市も候補になり得るし、1年に複数回開催する選択肢もあるかもしれない。イベント内容については、今回はターゲットを限定せず幅広い層を対象にして企画したが、次回以降は頂戴した意見を参考にしつつ、例えば環境意識の高い20代の若者たちに限定した企画をするのも一案だ」

――「アルミの日」の輪を協会以外にも広げる計画は。

 「アルミ業界に関わる幅広い方々にご参加いただかなければ、普及という意味では広がりが限定的になってしまう。今年のイベントは、まずは突破口を開いたというものであり、今後は関連団体やユーザー業界などにお声掛けしていくのも一つの手だ」

――一般消費者にアルミをPRするその他の方法は。

 「経済産業省が毎年夏休みに開催する小中学生を対象にしたこどもデーに参加している。純アルミと合金アルミの棒を曲げてもらい、アルミは他の金属を混ぜ合金にすると強くなることを感じ取ってもらうなど、まずはアルミに興味を持ってもらうことが大事。また教育現場でのアルミ教室などを支援していくことも進めている」

――将来を担う人材という点では大学における研究の充実化も重要なテーマになる。

 「学生に興味を持っていただく活動を進めつつ、その一方で研究者に対する研究助成を継続することで、研究現場をサポートしていきたい」

――数ある素材からアルミが選ばれるために、どのようなことを訴求すべきか。

 「アルミの特徴は、軽量で耐食性や抗菌性、熱伝導性に優れているということに加え、リサイクル性に優れるという点が大きな利点だ。アルミは製錬で大量の電力を消費するものの、リサイクルすることで消費エネルギーを97%削減できる。このような環境性能に対する理解を促すことが重要だろう。また水平リサイクルの価値の訴求や、水平リサイクルできる製品が増えていることもアルミが選ばれる理由につながるのではないか」

 「アルミを使う側から見ると、成形性の良さも注目すべきだと思っている。例えば、箔はミクロン単位まで薄くしてもアルミの特性を維持できるし、サッシなど押出材は一度の工程で複雑な形状で強度のある型材の加工が可能だ。アルミの原材料のボーキサイトは地殻に存在する金属では最大量の埋蔵量で、安定供給に優れる。これらから他素材と比較してもアルミが優れている部分だと考えている」

 「他素材との競争がある一方で〝共創〟も重要になる。現状は各素材が市場のニーズや規制に対応するためにそれぞれメニューを増やす必要があり、技術開発や市場開拓を進めている段階だが、いったんメニューが出そろえば素材ごとの機能を生かした分担がテーマになり、共創に移っていくことになる。例えば、サッシで断熱性能を高めるためにアルミと樹脂を組み合わせる動きもある。これらと合わせて新たな接合技術の開発も進んでおり、製品の性能を高めるための機能分担は一段と広がっていくのではないか。そのためには分離を前提とする設計も大事になる」

――役割分担が進む中、アルミの魅力をさらに高めるためには。

 「脱炭素化に向かう世の中のニーズに合わせて、グリーンアルミ(グリーン原材料とリサイクル原材料)の活用が重要になってくる。アルミ地金の全量を輸入に頼る我が国においては、グリーンアルミの確保はもちろん、リサイクル材の有効活用がテーマになる」

 「グリーンアルミの確保では、協会内に勉強会を立ち上げて、官民連携した取り組みの具体化を進めている。リサイクル材の活用では、アルミスクラップを国内循環できていないという課題がある。アルミスクラップの輸出量は14年度に15万トンだったものが24年度には約3倍の43万トンまで拡大しており、これは経済安全保障の観点からも対応が急務。行政当局との議論だけでなく、アルミ缶リサイクル協会と共同で地方自治体に国内循環の重要性をご理解いただくための活動を進めている」

――リサイクルの内容も多様化していくのでしょうか。

 「PCR(ポスト・コンシュマー・リサイクル)をアルミ缶以外の製品に拡大していくことが重要になる。アルミ缶のようなリサイクルの仕組みを、どのようにしてアルミ缶以外の製品で作っていくのか、官民共同で議論していく必要がある」