原田会長(左)と原田社長
原田会長(左)と原田社長

 独立系コイルセンター・鋼製ラックメーカーの瀬戸内スチール(原田弘人会長・原田憲太郎社長)は創業から数え今年10月に80周年を迎えた。店売り主体のコイルセンター(CC)を有する鉄鋼事業とスチールラック製造販売の物流機器を展開。2021年には社名を旧・原田鋼業から現社名へと変更し、新たなステージに踏み出している。22世紀にも生き残るコイルセンターとして、同社が標榜する「スチールプロ」の矜持を胸に、変化と挑戦を続けている原田社長に聞いた。(小田琢哉)

――創業の原点を振り返って。

 「1945年の終戦を迎えた時、福山は焼け野原だったと聞く。その中で祖父母が紳士服テーラー「原田洋服店」を立ち上げ、国内の重工業化が進む60年代に入り、65年に鉄鋼業へと進出した。25歳で会社に入った原田会長は実質的な創業者であり、会社の80年の歩みと自身の80年の人生を重ねながら、戦後の大きなうねりを体感しつつ事業の根幹を築いてきた」

――70周年以降の10年の変化は。

 「新工場の建設を機に、既存のスリッター2基・レベラー2基体制を見直し、スリッター2基・レベラー1基の新体制に移行した。工場を稼働させながらの設備廃棄・新設・増築を繰り返し、大変な作業ではあったが5年の時間を掛けて計画を完遂した」

 「ハード面の整備を終えた2020年以降は、人的資本への投資に着手した。外部専門家を招聘し、製造管理の基礎から見直して生産性の1・5倍向上に取り組み、これを達成した。安全面の向上には中国地区内のCC仲間に大いに助けられた。また2年前には関西コイルセンター工業会に竹林泰治会長からの誘いを受け入会。共通課題やリスク対応など同業者間での学びと情報共有ができる貴重な場で、当社の基幹システム選定にも助言をいただいた」

――これからのCCの在り方とは。

 「鉄鋼業も製造業も形は変われど、なくなることはない。CCも然りだ。JFEスチール西日本製鉄所・福山地区が存在する限り、我々も当地でコイルセンター業を続けていく。そのためにも22世紀型に進化しながら、次代に確実に事業を引き継ぐ責務がある」

 「中国地域内にフルラインアップのCCは少なく、今後はより横連携が大事になる。鉄鋼流通業界全体として市場が拡大する環境ではない中で、各社の製造加工の強みを生かし、設備更新やトラブル時に協力し合える互恵関係をしっかり構築していくことで、地区CC業界がより高い機能性が発揮できるよう努力していきたい」

――次の10年に向けた取り組みは。

 「足元は20年が経過した基幹システムの更新を実施中だ。オフコンからクラウド型のシステムに更新し、来年稼働する予定だ。新型コロナや働き方改革を経て社会の基盤が大きく変化する中、時代に即した効率的に働ける会社形態を作らねばならない。今年9月からは業務効率を高めるMS365を導入。生成AIを活用して代替可能な業務を任せ、無駄な時間や意思共有に要していた移動時間などの削減を進めていく。育児休暇の完全取得や有給休暇の取得(現在97%取得)と福利厚生の向上にも注力し、働きやすい会社を追求。本社事務所の大幅なリニューアルで快適な職場環境を構築したことも、その一環だ。22世紀も生き残るCCを目指し、変化を恐れず経営判断を積み上げていく」