社名をかたどった看板文字(写真(左)、旧本店事務所2階部分)が新事務所入口を飾るインテリアに(同(右))
社名をかたどった看板文字(写真(左)、旧本店事務所2階部分)が新事務所入口を飾るインテリアに(同(右))
社名をかたどった看板文字(写真(左)、旧本店事務所2階部分)が新事務所入口を飾るインテリアに(同(右))

 静岡県三島市で一般鋼材やステンレス、非鉄金属の加工・販売を手掛ける堀内商店(社長・堀内鉄兵氏)の事務所ドアを開けると、まず目に飛び込んでくるのが「堀」「内」「商」「店」のディスプレイ。一文字一文字が大きく迫力があり、スチール製ならではの重厚さを感じる。それでいて威圧感はなく、文字を照らすライトの優しさに包まれ、自然素材の壁とも調和し、温もりとともにどこか懐かしさも醸し出す。

 実はこれ、創業から70年近くにわたって営業し続けた旧本店事務所に掲げられていたステンレス製の外看板。昭和30年代に製作されたものらしい。

 建物の老朽化に伴い、2020年8月に自社所有する近傍のテナントビル3階に本店事務所(三島市大社町18―14)を移転・新装したが、その際に外看板をはずして新事務所の入口に移し、インテリアとして装飾した。

 旧事務所は、三嶋大社に向かう門前通り(えびす参道)に面して立地し、参拝客らで人通りも多い。大きな文字で社名をかたどった外看板は、さぞかし目立ったことだろう。

 ただ、当時はまだレーザ切断機などの無い時代。にもかかわらずステンレス板を切り抜き、立体文字に板金・組立する加工技術はなかなかのもの。草創期の商いに対する情熱がひしひしと伝わる。

 創業者は、現社長の祖母に当たる堀内久(ひさ)さん。もともとは実兄が隣町の沼津で営む鉄工所にトタン板や釘、針金といった鉄鋼二次製品を納めていたが、時代の変遷と顧客ニーズの多様化に応じて二代目の父・純男氏の代に一般鋼材を取り扱うようになる。そして今の三代目社長は、小口・即納をモットーに、特に切断・加工品に力を入れ、便利屋として重宝され受注も伸ばしている。

 「この看板文字には、わが社の歴史が詰まっている。だから新事務所に移っても『これだけは持っていこう』と考えていた」(堀内社長)。その際、匠のリフォーム技術によって思い出のアイテムを別の形で甦らせる人気TV番組(ビフォーアフター)をイメージした。

 これを会社のシンボルとし、誰もが目に付く本店事務所の入口に飾ることで「創業時から脈々と流れる商売への熱い想いを継承し、それを次の世代にもつないでいきたい」(同)と心新たに日々事業に精励する。(太田 一郎)