――会長在任時に取り組んだことは。
「2015年4月から会費制度を各社の加工設備能力に応じて負担する体系に改定した。それまでは1事業所単位で会費を徴収していた。会費制度の改定は当工業会にとって長年の課題だったが、財務委員会の山下雄平委員長(当時)が主導してスムーズに実現できた。この会費改定によって当工業会の財務基盤を強固にすることができたと考えている」
「日本の鉄スクラップ輸出が拡大する時代背景もあって輸出先であるアジア各国との交流が求められた。安東元吉委員長(当時)をはじめ、国際ネットワーク委員会の方々がアジア各国に会長の私を連れ出してくれた。中でも2015年5月、中国・青島で開催された中国廃鋼鉄応用協会の大会で人生初となる英語での講演を行ったことは非常に印象深い。英文のスピーチ原稿は事務局の乗田佐喜夫常務参与(当時)に添削していただいた」
「国内では輸出拡大に向けて大型船に対応できる港湾整備の必要性を国土交通省や国会議員に要望する取り組みも行った。そのほかさまざまな活動について委員会や会員、本部の皆様に支援いただき、感謝している」
――現在の工業会の活動をどう見ているか。
「国際ネットワーク委員会を昨年5月の理事会で発展的に解散したことは残念だと感じている。海外交流に関する接遇、設営のノウハウは長年の取り組みの中で築かれた面があり、一旦休止すると再構築には時間がかかるだろう。直接的な商売上のメリットが薄れたとは言え、アジアの同業者の現状を定期的に確認する機会はあっても良かったと思う」
――次世代へのメッセージを。
「私の信条は『心の欲する所に従いて矩(のり)を踰(こ)えず』。論語の言葉だが『矩を踰えず』はコンプライアンス(法令順守)も意味する。不適正ヤードが社会的な問題となる中、工業会会員こそが「己の矩」に則って事業運営するモデルであってほしい」
「工業会の活動については、人として、経営者として、または良き事業者として互いに高め合う場にしてもらいたい。会員同士の交流を通じて人間性を高めていけると良いと思う。若手にとって諸先輩の所作や言動を目の当たりにできることは貴重な経験であり、自らの糧になる」