60年前の手動式25トン台秤
60年前の手動式25トン台秤

 岩手県花巻市で鉄、アルミ、ステンレス、銅など金属スクラップや古紙リサイクル業を営む今弘商店(社長・高橋文一氏)のお宝は、1960年10月に製造された貨物自動車計重台秤(井内衡機製)。現在も本社事務所内に置かれているが、手動式で今でも使用できる貴重な逸品だ。

 同社は30年に初代・文次郎氏が合資会社として創業。2代目・文吉氏が60年、現在地に新事務所を建設するのと同時に購入した。購入金額は95万円で当時の大学卒業者初任給1万3千円の約73倍に当たる。「事務所を新築し、台秤も買ってこれから商売を頑張ろうという父・文吉の意気込みを感じる」と語る高橋社長。秤はスクラップ業にとって商売の基本道具・売上げの源だが、子供だった高橋社長は興味津々で台秤の上で遊び、怒られたこともあったそうだ。

 台秤はトラックに積載され持ち込まれた古布や古紙、金属などを25トンまで計量でき、息の長い活躍で会社の業容拡大を支えた。その後はデジタル計量機の普及とともに第一線を退き、現在は地域で年間を通して実施される資源回収の時などの春と秋の繁忙期に使用する。

 現役で使用するためには2年に1度の検査に合格しなければならず、メンテナンスを田中衡機工業所(本社・新潟県三条市)に依頼している。今年は検査年にあたり、9月に受検を予定している。受検費用は1回8万円超と決して安くはないが「デジタル計量機よりある意味丈夫。停電時にも使えるメリットもある。壊れない限りはこれからも大切に使っていく」(高橋社長)。

 台秤はその貴重さから、岩手県の一般社団法人・計量計測技術センターが実施する「計量証明事業(質量)主任計量者」講習のテキスト中に写真入りで紹介されている。現役引退後は同センターからの要望を受け寄贈する予定としている。(小室 慎)