シュマーグ社製センタレスグラインダー
シュマーグ社製センタレスグラインダー
マルメディ社製伸線機
マルメディ社製伸線機
シュマーグ社製センタレスグラインダー マルメディ社製伸線機

 創業から80余年を数える大手磨棒鋼・CH鋼線メーカー、宮崎精鋼(本社・名古屋市中川区、社長・宮崎元伸氏)。その特殊鋼棒線生産の草創期を支えた設備が、十四山工場(愛知県弥富市)、知多工場(同東海市)にモニュメントとして残されている。独・シュマーグ社センタレスグラインダー、独・マルメディ社製の伸線機だ。

 創業者である宮崎清三郎氏は早くから磨棒鋼生産の合理化、設備の近代化を志向していた。その思いを受け、後に二代目社長となる宮崎俊則氏が当時最先端の技術を有していた西ドイツへ渡航。1957年(昭32)、シュマーグ社の連続引抜機を購入した。

 このとき同時に手当てしたのがモニュメントとした2設備だ。シュマーグ社のセンタレス機は日本の二次加工メーカーで初めての設置、マルメディ社の伸線機は同社が線材加工を始めるに当たっての第一号機だった。

 最新の機械を導入したことによって生産性や品質、歩留まりが飛躍的に向上した。宮崎精鋼の近代設備を活用した磨棒鋼、冷間圧造用鋼線の量産体制確立こそが、国内棒線生産のトレンドを一変させたと言っても過言ではない。

 両設備の活躍で宮崎精鋼の生産規模は年を追うごとに拡大。自動車関連を中心に年々取引先を開拓し、国内きっての二次加工メーカーへ成長を遂げる原動力となった。

 センタレスグラインダーは2004年まで、伸線機は1993年まで同社の生産を支え続け、それぞれ創業から70周年、75年の節目で社員の手によって記念碑に仕立て上げられた。現在に至るまで定期的に清掃、再塗装され、美麗な外観を維持し続けている。

 新型コロナ影響で近年は中止を余儀なくされているものの、社員の家族やOB社員を招いて開く「ホームカミングデー」でも、OBがこのモニュメントを囲んで当時を思い返し、昔話に花を咲かせることもあるのだとか。

 「社員に機械への敬意、当時のオペレーターに対する尊敬の念を持って日々の業務に励んでほしい」――こうした思いで設置された二つのモニュメントは、常に原点へ立ち返り、明日への奮起を促す象徴として、今日も宮崎精鋼の生産現場を見守り続けている。(佐野 雄紀)